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今月の薬草

セイヨウカラシナ
Brassica juncea Czern. et Coss. ( アブラナ科 )

セイヨウカラシナ
Brassica juncea Czern. et Coss. ( アブラナ科 )

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セイヨウアブラナの葉
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 セイヨウカラシナは,中央アジアでクロガラシ(Brassica nigra)とアブラナ(B. rapa)が自然交雑した種と推測されています。二年生草本植物。日本へは中国より弥生時代に渡来したといわれています。各地の荒れ地や河川敷土手などに野生化し,時には河原一面に群生していることがあります。全株特有の辛味があり,草丈は1~1.5 m,葉はダイコンの葉に似て,しばしば不規則な羽状に深く切れ込み,葉の基部は茎を抱いていません。花は黄色で茎の上部に総状につき,春に咲きます。果実は線形,種子は球状で黄褐色を呈しています。類似のセイヨウアブラナやアブラナとは,葉の基部は茎を抱いている点で区別できます。
 和名は辛味のある菜という意味です。刺激性のある辛味成分は酵素によって分解され生成されたものです。和がらしとして利用することがあります。また食材として親しまれている野菜のタカナ(高菜)やヤマガタセイサイ(山形青菜),ザーサイ(搾菜)などもセイヨウカラシナの栽培変種といわれています。因みに本草和名(918)や和名抄(932)などの本草書には,漢名の「芥」に対して「加良之(からし)」と記載されています。薬用には成熟した種子を用い,生薬名を芥子(がいし)といいます。辛味性健胃薬や引赤去痰薬,発泡薬とする他,リウマチや捻挫などの患部に湿布薬とします。しかし皮膚に対して強い刺激性があるため,皮膚が弱い方は赤くはれ上がることがあります。従って素人療法は,あまりお勧めしません。
 「芥子」という漢字は,どちらかといえばアヘンを採取するケシ(Papaver somniferum)をイメージされる方が多いのではと思いますが,本来はセイヨウカラシナの種子を指しています。これは平安時代に渡来してきたケシの種子の形状がよく似ていたことから,室町時代の中ごろに誤って名づけられたようです。因みにセイヨウカラシナとケシの種子は小さいという点では類似していますが,セイヨウカラシナの種子は球状,ケシの種子は腎臓形を呈していますので,よく観察するとかなり異なっていることが分かります。(磯田 進・鳥居塚 和生)