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会頭メッセージ

薬学の今、そして未来のために

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 2025年3月26日より日本薬学会会頭を拝命しました。明治13年(1880年)に長井長義初代会頭のもとに発足し、今年で145年を迎える日本薬学会の社会的役割は大きい上に、第73代目にして初の女性会頭となることを知り身が引き締まる思いです。変化の規模、内容、速度が驚くほど大きい昨今、本学会がいかにして先導的に展開していくのか、大きな課題を突きつけられています。

 日本薬学会には、代議員総会のもとに理事会が置かれ組織運営をしています。また、理事会のもと、18の常置委員会と2つの特別委員会が事業を推進し、8支部や10部会を学術的構成単位とし、それぞれが活発に活動してきました。特に専門性の追求については積極的に実効し、研究成果をあげてきました。しかし、社会の変化は予想以上に早く、一つの専門性だけで創薬が実現できない時代となりました。

日本薬学会 会頭 石井 伊都子

 薬学教育6年制が導入されてから20年近くになります。それと並行して医療現場の薬剤師の在り方も大きく変わりました。主に薬に向き合ってきた薬剤師が、より患者と接する時間が増え、薬物治療の有効性や安全性を評価する時代となったのです。医療現場における創薬のニーズが、医師からだけでなく薬剤師からも得られる時代となりました。

 薬学とは「薬」を専門とする学問であり、「薬を創る学問」「薬の作用機序を明らかにする学問」「薬を正しく使う学問」です。日本薬学会は、研究者、製造業者、薬剤師、行政、学生など様々な立場の会員が所属する学会です。これらのメンバーがダイバーシティーを尊重し積極的に情報交換することで領域の融合や連携が可能となり、日本薬学会による患者のための創薬が実現できると考えます。その長期的展望の一つが、日本学術会議「未来の学術振興構想(2023年版)」に採択された「デジタルツインによる創薬と医療のパラダイムシフト」であり、これを実現すべく、データ駆動型AI創薬研究推進WGを開始しました。

 日本薬学会は国際交流にも力を入れています。アジア医薬化学連合(AFMC)との連携、ドイツ薬学会・韓国薬学会・台湾薬学会・カナダ薬学会と2国間交流協定を締結し、それぞれシンポジストを派遣及び招聘しています。今後も、積極的に世界の研究者との交流を推進する予定です。

 日本薬学会はChem. Pharm. Bull.、 Biol. Pharm. Bull.、薬学雑誌の学術誌3誌について、完全オンライン化を果たしました。これらの雑誌については、インパクトファクターを上げるなど、社会的により有用な学術情報となるよう努めます。また、学会の情報誌である会員誌ファルマシアについてもデジタルブックを発行しています。いつ、どこにいても会員の皆様がこれらにアクセスできる利便性を追求していきたいと考えます。

 2025年度の体制は、原俊太郎教授(環境・衛生)と二木史朗教授(化学)に副会頭として参画いただき、国際化と分野融合の動きを加速し本学会を更に魅力的な学会に発展させる所存です。若い研究者が未来に希望を持ち、薬学生たちが薬学という学問を賞玩できるような環境を提示したいと考えています。会員の皆様には温かいご支援とご協力をお願いいたします。

過去の会頭メッセージ

2023年度 会頭メッセージ - 岩渕 好治

2021年度 会頭メッセージ - 佐々木 茂貴