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今月の薬草

シナレンギョウ
Forsythia viridissima LINDLEY ( モクセイ科 )

シナレンギョウ
Forsythia viridissima LINDLEY ( モクセイ科 )

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果実
-写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載-

 中国原産の落葉低木。春,その息吹と明るさを象徴するかのように,茎は上方に勢いよく伸び,枝一杯に花をつけます。刈り込みに強いところから,庭木や公園の植え込みとして植栽されています。果実は三角状で,種子には翼があります。枝を下向きに垂れる同じ仲間のレンギョウは,近頃ではあまり栽培されなくなりました。ともに中国原産ですが,レンギョウの渡来が江戸の初期だったのに対し,シナレンギョウは大正の末期です。在来種は中国地方に分布するヤマトレンギョウと小豆島のみに生育しているショウドシマレンギョウの2種ですが,共に絶滅危惧種に指定されています。
 和名は漢名の連翹を音読みしたものです。しかし,中国の古い本草書には「湿り気のあるところに生育している草本植物」との記載があることから,連翹はオトギリソウ科のオトギリソウやトモエソウの仲間を指すという説もあります。薬用には果実を用います。生薬名もレンギョウ(連翹)といい,消炎排膿薬として利用します。
 十和田湖畔に立つブロンズ像「乙女の像」や詩集「智恵子抄」などの代表作を残し,彫刻家としても詩人としても有名な高村光太郎(1883-1956)は,大のレンギョウ好きだったそうです。春は,アトリエ前の庭の黄色いレンギョウの花を観賞して創作活動の気分転換をしていたそうです。病のため永久の旅立ちをした昭和31年4月2日,棺には黄色い花をつけたレンギョウの小枝が添えられていました。彼の命日が連翹忌といわれるのはそのためだそうです。(磯田 進)