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今月の薬草

サンシュユ
Cornus officinalis SIEB. et ZUCC. ( ミズキ科 )

サンシュユ
Cornus officinalis SIEB. et ZUCC. ( ミズキ科 )

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果実
-写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載-

 中国,朝鮮半島原産の落葉高木。早春,花の少ない庭や公園を彩る花木として栽培されています。花は黄色で小さく,葉が出る前に咲きます。果実は長楕円形でやや酸味があります。我が国で初めて植栽されたのは,享保年間(1716~35年),小石川の御薬園とされています。以来,花や実の風情から観賞用として日本庭園などでもよく見受けられます。
 和名は漢名の山茱萸を音読みしたものです。早春に咲く花を黄金に見立ててハルコガネバナ(春黄金花),また秋に紅熟する果実を珊瑚に見立ててアキサンゴ(秋珊瑚)などの別名もあります。薬用には果肉を用い,生薬名もサンシュユ(山茱萸)で強壮を目的とした漢方処方に配剤されます。
 早春に咲く野花や花木は,厳しい冬を耐え,春を待ち望んでいたかのように咲き出します。花の色からみると,白色系のウメやコブシ,紅色系の紅梅やツバキ,ホトケノザ,ヒメオドリコソウ,青色系のタチツボスミレやオオイヌノフグリ,黄色系のマンサクやレンギョウ,タンポポなどと多彩です。が,黄色系はインパクトが強いのでしょう,黄色い花のサンシュユは中国原産であるにも関わらず,日本の春を代表する花木の一つになっています。また日本の伝統文化である茶道においても茶花としても人気があります。ちなみに,その花言葉は「耐久・持続」。希望に溢れる春,冬を耐え忍んだ黄色い花は花言葉に相応しく見えてきます。(磯田 進)