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今月の薬草

リュウガン
Euphoria longana Lamarck ( ムクロジ科 )

リュウガン
Euphoria longana Lamarck ( ムクロジ科 )

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果実

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ライチの実

 リュウガンは中国南部から東南アジア原産の常緑高木で、果樹として熱帯各地で栽培されています。樹高は10~15m,葉は互生し,葉身は羽状複葉です。小葉は楕円形から卵状ひ針形,やや革質で厚みがあります。花は小さく黄白色で芳香がある両性花と単性花を生じ,総状から円錐状に多数ついて春に開花します。果実は径2.5cmくらいの球形で黄褐色,内部はゼリー状で乳白色の果肉(仮種皮)があり,特有の風味と甘みがあります。そして中心部には暗褐色で径7~8cmの丸い種子を生じます。材は赤褐色を帯びて硬く独特の風合いがあるため,装飾用の細工材などに利用されています。
 和名は漢名の「龍眼」に由来し,白い果肉と暗褐色の丸い種子を想像上の生き物である龍(竜)の目に例えて名づけられました。薬用には外側の殻と丸い種子を取り除いた果肉を用います。生薬名をリュウガンニク(竜眼肉)といい,滋養強壮や抗不安を目的とした帰脾湯や加味帰脾湯などの漢方処方に配剤されています。生の状態では果肉は乳白色ですが,乾燥した生薬は赤褐色から褐色を呈します。また食材としても中国料理などに利用されています。
 比較的耐寒性が強いため,沖縄県の八重山列島などでも栽培されています。薩摩藩の八代藩主であった島津重豪(1745- 1833)は,当時としては大変珍しいリュウガンやライチ(Litchi chinensis Sonnerat)などの薬木や果樹を藩の薬園に植栽しました。それらの樹木は今でも鹿児島県南大隅町にある佐多旧薬園に現存しています。そのため当時を知る貴重な薬園として,昭和7年(1932)に国の史跡に指定されました。リュウガンとライチは樹形や果実の形が類似しているためよく勘違いされますが,ライチの果実はリュウガンと比較してやや大きく,表面が赤味を帯びてうろこ状の突起を生じ,甘味が優っているという点で容易に区別できます。なおライチは絶世の美人といわれている楊貴妃がとても好んだ果物といわれ,遠方の地より早馬で運ばせたという逸話が知られています。
(磯田 進・鳥居塚 和生)