ヤマトリカブト
Aconitum japonicum T
花 |
-写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載-
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本州の中部地方から東北地方にかけて林床に見られる多年草です。秋に青紫色花をつけます。花びらのように見えるのは「がく」が変化したものです。花びらは,その中に隠れ,外側からは見えません。
和名の由来は,山地に見られ,花が雅楽奏者のかぶる冠に見えるからです。薬用には塊根を用います。生薬名をブシ(附子)といい,鎮痛薬や新陳代謝亢進に用います。しかし心臓に強く作用する成分も含まれていますので,慎重に減毒処理したものを利用しています。昔から附子を上手に使いこなせる漢方医は名医といわれるほど,取り扱いがとても難しい薬の一つなので,素人療法でこれを用いるのは非常に危険です。
殺人事件で世間の注目を集めましたが,トリカブトは猛毒で,とくに芽生えの頃は他の山菜と見分けにくいために,これによる中毒事故は毎年のように報告されています。
ブシに関する狂言を紹介しましょう。演題は「附子・ぶす」です。
二人の奉公人が主人から「附子の壺」を預かりました。中身が黒砂糖であることに気づいた二人は,中身をすべて舐めつくしてしまいました。そして二人は主人が大事にしていた書画骨董をわざとに壊してしまい,帰宅した主人に「死んでお詫びをするつもりで,附子をすべて舐めました」と言いました。
ブシは「言い訳の特効薬」でもあるようです。(磯田 進)