会頭メッセージ
日本薬学会の持続的な発展を目指して
2023年度より日本薬学会会頭を拝命した岩渕です。2020年初頭からCOVID-19の感染拡大で世界が大混乱に陥りましたが、史上初のmRNAワクチンや治療薬が驚くべきスピードで次々と開発そして臨床適用され、ニューノーマルの世界が始まったことを実感されていることと思います。100年に一度といわれるパンデミックが、我々の思考と行動様式にどのような影響を及ぼしたのか、また急速に進行しつつあるデジタル改革が、薬学研究や臨床の現場に如何なる影響を及ぼし、将来のために今、何をすべきか、専門分野の異なる10部会、各地域の8支部会、16の常置委員会、2つの特別委員会および事務局との連携をこれまで以上に密にして速やかに取り組む必要があります。
日本薬学会 会頭 岩渕 好治
日本薬学会は、初代会頭となった長井長義先生の薬学に対する情熱のもと、1880年(明治13年)4月に創立された143年の歴史と伝統を誇る我が国有数の学術団体です。現在、15,000名を超える個人会員、200 以上の団体・企業の賛助会員を有し、「薬学」という共通のキーワードのもと、大学、企業、医療機関、各種研究機関、行政機関等、広範な専門領域からの多様な会員により構成され、学会活動が展開されています。病に苦しむ人々、そして人類社会の期待に応えるべく、会員の皆様と力を合わせて薬学の発展に資する学会としての進化を遂げられるように精一杯努力していく所存です。
日本薬学会はChem. Pharm. Bull.,Biol. Pharm. Bull.,YAKUGAKU ZASSHIの学術誌3誌、学会の情報誌ファルマシアの刊行を通じて薬学の発展に貢献してきました。髙倉喜信会頭の時代から編集体制の改革に取り組み、J-STAGEとの連携を推進し、英文2誌についてはNewsletterをメールマガジンとして配信し、最新号のGraphical Abstractからいち早く論文にアクセス可能にする等の利便性を向上させた成果がインパクトファクターの向上として顕れ始めました。日本薬学会が誇る学術誌としての一層の発展を期して、会員の皆様には奮っての投稿をお願いいたします。
次世代を担う若手薬学研究者の育成は、我が国の薬学研究の持続的な発展のための喫緊の課題といえます。本学会では柴﨑正勝会頭のリーダーシップのもと、2015 年に「長井記念薬学研究奨励支援事業」として、4年制博士課程・博士後期課程を対象とした奨学金制度を新設し、2022年には本事業受給者を対象として若手研究者賞を創設して受賞者を第142年会(名古屋)で顕彰しました。年会、部会、支部会における奨励賞、優秀発表賞等の顕彰活動、そして英語による発表の機会の提供を通じて、学部生、大学院生を含めた若手研究者の活性化を継続的に進めていく所存です。さらに、ホームページを刷新して、本学会の活力の根幹となる会員数増加を視野に入れ、若年層により早期から薬学に対する関心を高める活動を進めます。日本薬学会は様々な立場で医薬品をライフワークとしている方々の学会でもあることから、人生100年時代を見据えて、シニア世代の会員の方にも積極的に本学会活動に参加いただける仕組みを設けていきます。
これからの2年間、副会頭に選出された石井伊都子教授(医療薬学)と林良雄教授(化学)とともに、佐々木茂貴前会頭が推進した分野融合とダイバーシティ拡大、そして国際化への動きを加速して日本薬学会を一層魅力的な学会に発展させる所存です。会員の皆様のご支援とご協力を、切にお願い申し上げます。