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薬学と私

第18回
薬学に託す夢 ~TV番組のキャスターを務めて~

昭和大学薬学部6年生
森山 眞之助 氏

就職氷河期にあって、なぜ薬学部が注目されているのか?そんなテーマにフォーカスしたドキュメント番組が 3/21深夜、フジテレビで放映されました。6年制の導入により病院および薬局での実務実習が課せられ、医療現場でのさらなる活躍が期待される薬学生。実際に実務実習を修了し臨床薬剤師としての体験をした森山眞之助さん(昭和大学薬学部6年生)が番組のキャスターを務めました。薬学会の西島会頭をはじめ、様々な薬学界関係者にインタビューを行った彼に、話を聞いてみました。

薬学を志した理由

子どもの頃、何に効くかも知らずに、数多くの薬を服用する祖母の姿を見て、将来は家族に薬の説明、医療の説明ができるようになりたいと薬学に興味を持ちました。そして、薬学部が6年制となり更に臨床現場に近い仕事ができるようになったことは、私の夢を大きく拡げるものとなり、迷わず薬学部を受験したわけです。

実務実習について

6年制の薬学教育カリキュラムでは、5年生になると病院および薬局での実務実習を行います。実際にチーム医療の中に加えさせていただき、医師や看護師、患者さんとのコミュニケーションを学びます。正直、医学部の学生と違う扱いを受けたことに不満を感じ、番組の中でもそれを話してしまいましたが、今思えば、初めての6年制薬学卒業者が今年3月に誕生したばかりで、真新しい本実習のプランニングは相当大変な仕事なのではないかと思います。実習を経験した学生、教員の声を元に今後モディファイされさらに完成度の高いものに仕上がっていくものでしょう。この実習は大変ですが、得られるものはとても大きく、社会でこれから必ず役に立つものと実感しています。

番組のキャスターを務めて学んだこと

日本薬学会の西島会頭や薬剤師会の児玉会長といった錚々たるメンバーにお会いできて、世界観の違いを強く感じました。改めて、薬学という世界が単なる自然科学でなく生命を預かる社会科学性が強い学問だと知り、また薬のプロとしてのリーダーシップを発揮することが私たちに求められていることを学びました。中学時代、私は野球部に所属していましたが、TV中継でもお馴染のとおり、ピンチの時にマウンドに集まるのは内野手というのが当たり前でした。しかし、外野手も外野の専門家という観点でもっと関わりを持つべきだと思います。すべてのプレーヤーが専門性を持ち、そしてチームとしてお互いに関わりあいを持つことでいいゲームができるのだと考えられるようになりました。

今後の進路について

製薬企業のMRになりたいと思っています。臨床現場でいかに情報が大切であるかを知り、新薬に関する適切な情報を迅速に医師に伝えることこそが、患者さんの命を救うことにつながると知ったからです。また、このことは子どもの頃の夢にも通じています。番組の中では、医師を訪ねる製薬企業のMRの方にも同行させていただきました。とても大変な仕事ですが患者さんのことを常に考えて一所懸命努力をされているMRの姿はとても美しく映りました。将来は、積み重ねた経験と知識を元にして、薬の専門家としての薬剤師の地位を高めるための社会啓発活動を行いたいと思っています。さらには、正しい医療情報がしっかり伝わっていない国々へ赴き、ひとりでも多くの患者さんを救うことに尽力することが夢です。

薬学を志す後輩、高校生へのメッセージ

志を持つということは、必ず何らかの理由なりきっかけがあるはずです。それを忘れずに持ち続けることはとても大切なことだと思います。今後、新しいタイプの医薬品が次々と登場してくると製薬企業の方々がおっしゃっていましたが、それらの革新的新薬を安全に使うためには、薬のプロがしっかりとしなければならないのだと思いました。薬学を卒業した先輩諸氏は様々な世界で薬に関わる仕事をしています。是非、いろいろなことにチャレンジしていきましょう。

<西島正弘 日本薬学会会頭より>

今年3月に6年制薬学部の第一期生が社会に旅立って行きました。チーム医療における医療関係者の皆さま並びに患者さんとのコミュニケーションの在り方を学んだ体験は、臨床薬剤師としてのみならず、製薬企業を含めあらゆる薬学界での職務をサポートしてくれるはずです。生命科学である薬学は自然科学のみならず、倫理や生活・文化など社会科学的要素を併せ持つ学問です。それゆえ、就任時のご挨拶でも述べましたとおり、社会のニーズに応えられる薬学会が私の目標であり、社会にもっと開かれた団体と認知されたいと考えておりますので、今回、フジテレビの番組でこのように取り上げられたことを大変喜ばしく思っております。森山さんが語っておりますように、<薬のプロが医療の現場にいるから安心して革新性の高い医薬品を企業は開発できるし医療現場でも使える>、そんな未来のためにも、薬学を学ぶ方々にはしっかりとしたビジョンを持っていただければと思います。今後とも、皆さまのご支援をどうぞよろしくお願いします。