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日本薬学会・日本学術会議共同主催 公開シンポジウム「くすりのエキスパートが語る"よくわかる新型コロナウイルスワクチン"」皆様からのご質問への回答 その2

2021/07/12

4月24日に行いましたシンポジウム「くすりのエキスパートが語る"よくわかる新型コロナウイルスワクチン"」にて、参加者の皆様から寄せられた質問への回答のその2です。
今回は、皆様から寄せられたワクチンに関する種々のご質問の中で、1回目の回答で取り上げることが出来なかった質問について回答いたしました。参加者の皆様から沢山のご質問を頂戴いたしました。1回目と2回目に回答できなかった質問への回答も今後順次掲載いたします。
(回答その1は⇒こちら
(回答その3は⇒こちら
 

質問一覧

 
 

質問と回答

 
質問1:如何にしてワクチン接種をしてもらうか、とても悩んでいます。どの先生でもいいので良い方法があれば、ご教授いただきたいです。
回答:新型コロナワクチン接種を受けることを望んでいない方に対してどうしたらよいのか悩んでいるという質問と考えて回答を致します。
 まずは、その望まない理由を知ることが重要かと思います。その理由が、既に日本薬学会のHPに掲載している質問と回答にありましたら、それを使って頂くのが良いかと思います。もし、そこにない理由の場合には、薬学会の問い合わせ先のメールにご連絡を頂きましたら、可能な範囲で対応を致します。
 
質問2-1:ワクチンとは関係のない質問で恐縮ですが、小児の方が成人より感染者が少なく、重症化しにくい理由は何でしょうか。
質問2-2:成人と小児でACE2受容体発現が異なることで今回の感染の広がり方が以前と異なっている原因となっているのでしょうか?
回答:新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する時に、細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2という受容体に結合しますが、小児ではこの受容体が少ないために新型コロナウイルスに感染しにくい可能性があると考えられています。
 小児の方が成人より重症化しにくい理由については、以下のように考えられます。 厚生労働省のHPの資料(2021年4月時点の資料 https://www.mhlw.go.jp/content/000749530.pdf)に掲載されていますが、重症化しやすいのは高齢者と基礎疾患のある方で、重症化のリスクとなる基礎疾患等には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、 心血管疾患、肥満、喫煙があるとなっています。各年代の重症化率を比較すると、30歳代を1倍とした場合、10歳未満は0.5倍、10歳代は0.2倍、20歳代0.3倍、40歳代4倍、50歳代10倍、60歳代25倍、70歳代47倍、80歳代71倍、90歳代78倍となっています。小児においては上記の基礎疾患のある方はほとんどいないこと、加齢により生じる細胞のダメージが蓄積されていないことも関係していると考えられます。重症化の状態についてですが、新型コロナウイルスが体内で増えて肺などの臓器の細胞がダメージを受けて機能が低下するものと、新型コロナウイルスが体内で増えて全身性の炎症が過剰に起こるもの、などが考えられます。
 
質問3:新型コロナウイルスの変異株の特徴はACE2受容体(アンジオテンシン変換酵素2受容体)を介した感染性の違いとのことですが本当でしょうか?
回答:新型コロナウイルスの変異株についてのご質問ですが、新型コロナウイルスは体内で増殖をする際にウイルスの遺伝情報に変異(遺伝子の複製のエラー)が入り、変異したウイルスが感染した方の中で増え、他の方に感染していくことで変異株として同定されます。ACE2受容体は、新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する時の受容体で、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が結合することにより、新型コロナウイルスが細胞に侵入します。最近の研究で、ACE2受容体タンパク質と新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が結合した状況を観察することに成功し、スパイクタンパク質のアミノ酸が変異したアルファ株(旧呼称:英国型変異株、N501Y変異)ではACE2受容体への親和性が増加することが示されました。このようにウイルスが変異することによって、ACE2受容体を介したウイルスと細胞が結合する能力が変わることが、ウイルスの感染性が変わる理由の一つと推測されています。しかしながら、この変異は中和抗体の結合部位のエピトープ(抗体によって認識される部位のこと)の構造変化を起こさないため、ワクチン接種によって得られる中和抗体の結合に影響しないと考えられることも合わせて報告されています。(PLOS Biology 2021, https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001237
 
質問4:大学に、コロナのワクチンは若い人ほど副反応が大きく、ベネフィットよりもリスクが高いため、君たちにはワクチン接種はおすすめしないとおっしゃる先生がいます。事実なのでしょうか?
回答:若い人は高齢の方よりも新型コロナワクチン接種後の症状は強くでることが報告されています1)。しかしながら、若い人の間の新型コロナウイルス感染症が広がっていること、仮に感染した場合、新型コロナウイルス感染症は若い人でも味覚・嗅覚障害などの後遺症が発生し、後遺症は長く続くことがあること2)、本人が無症状であっても、友人や親族など、ワクチンを接種していないと他の人に新型コロナウイルス感染症を移す可能性が高くなることから、若い方も新型コロナワクチンの接種のメリットは大きいですので、特別な理由がなければ接種を受けられることが望ましいと思われます。健康上の何らかの懸念がある場合の接種の是非は、かかりつけの医師等にご相談ください。
 1) 令和3年6月23日(水)第62回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第11回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催) 資料2, https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796565.pdf, (2021年7月1日アクセス)
 2) 東京iCDC専門家ボード 感染症診療チーム, 「新型コロナウイルス感染症 レジストリを活用した研究・後遺症に関する疫学調査」, https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/012/970/31kai/2021020407.pdf, (2021年7月1日アクセス)
 
質問5:輸送の安定性はわかりましたが、注射器に詰める際、空気を抜くために注射筒をタッピングする(はじく)ことによる影響についてはいかがでしょうか。
回答:注射器に詰める際に空気を抜くために注射筒をタッピングする(はじく)ことは問題ないと考えます。バイアルを激しく振らないようにとなっていますが、これは泡が生じることにより、ワクチンに影響を与えることが考えられるためです。
 
質問6:DNAワクチンはRNAワクチンに比べ安定ですが、体内で分解されるとは思いますが、残留が長くなればDNAについてはヒト遺伝子に組み込まれる可能性はないのでしょうか?
回答:新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチンは、現時点(2021年7月1日)で実用化されていませんが、現在開発されているDNAワクチンの1つと同様の構造を持つDNA医薬品については、ヒト遺伝子に組み込まれたとの報告はありません。
 
質問7:現在、世界中で承認されている新型コロナワクチンの種類はいくつありますか。
回答:6月30日現在、米国のNew York Times紙は、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、J&J、ロシアのガマレヤ研究所(スプートニクV)、中国のシノバック、中国のシノファームなど、11種類のワクチンが承認されていると報道していますが(https://www.nytimes.com/interactive/2020/science/coronavirus-vaccine-tracker.html)、限られた地域のみで使用されるワクチンを含めれば、他にも存在する可能性があります。
 
質問8:多くのワクチンが開発されていますが、インフルエンザワクチンのように毎年接種(あるいは間隔を開けて)の必要があるのでしょうか?
回答:厚生労働省のHPの新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html)に、「効果の持続期間については、例えばファイザー社のワクチンの場合、海外で実施された臨床試験後の追跡調査の結果によると、2回目接種後6ヶ月の発症予防効果は91.3%であったという報告もあります。また、武田/モデルナ社のワクチンの場合、同様の調査において、2回目接種後6ヶ月の発症予防効果は90%以上と発表されています。今後も引き続き、集積される様々なデータを見ていく必要があります。」となっています。
 また、2021年6月開催の日本薬学会とカナダ薬学会の合同国際シンポジウムにおいて、「高齢者において、抗体価が低下する傾向が認められる」という報告もあることから、一定期間毎のワクチン接種が必要となることが想定されます。
 
質問9:初回がmRNAワクチン、2回目が(ウイルス)ベクターワクチンだった場合、効果に違いが出たり、何か影響がありますか。
回答:国で承認を受けた同じワクチンを2回接種することを守って頂くことが前提ではありますが、海外ではご質問のような臨床試験も実施されており、一部の有害事象の発生割合が変化するなどの結果が報告されています。1)
 1) Lancet. 2021 May 29;397(10289):2043-2046. doi: 10.1016/S0140-6736(21)01115-6. Epub 2021 May 12.
 
質問10:コロナワクチンによるアナフィラキシーは、「特定の免疫型を持つ」非自己のmRNAに対する正常な免疫反応とは考えられませんか?
回答:新型コロナワクチンに対するアナフィラキシーは、ワクチンに含まれる種々の成分に対する副反応と考えられますが、その詳細はわかっていません。
 
質問11-1:抗体の持続時間を考えた時、ワクチン接種を受けた人々が、感染拡大防止のために取る態度として、接種していない人と全く同じにすべきでしょうか。
質問11-2:接種率がどの程度になれば、マスク等の感染対策を行った上での集団行動が許されるようになるのでしょうか。
回答:ワクチン接種後も国による感染予防の対策に関する方針に示されるまでは、ワクチン接種前と同様に感染予防を行って下さい。
 6月15日、滋賀県は新型コロナウイルスのワクチンを接種していて感染した人が30人確認されたと発表し、接種後も感染対策を徹底するよう呼びかけています。 滋賀県によりますと、県内で6月14日までに新型コロナワクチンを接種した人は1回目が約15万6000人、2回目が約6万4000人となっています。このうち30人が新型コロナウイルスに感染し、うち5人は2回目の接種後に感染したということです。
 一方、ワクチン接種が先行している国(イギリス、アメリカなど)では、国民全体の接種状況を踏まえ、国あるいは州単位で制限の緩和をしていますが、注意すべきは、もともとイギリスではロックダウンという強い制限が行われていたことがあり、それを順次緩和することを検討しているようですが、デルタ株の影響と思われる感染者の増加も見られている状況です。やはり、専門家の意見に耳を傾けて感染対策をした上で徐々にもとの社会生活に戻ることが大切と思われます。
 
質問12:ファイザー社のワクチンはエマルジョン製剤と考えています。貴重なワクチンを無駄なく使用する目的で、インスリン用の注射針(27G)を改良した注射器の開発を進めている企業がありますが、細い注射針を使ってバイアルから薬液を注射筒に吸引すると、注射筒内で渦流が発生し、エマルジョンが破壊され、mRNAが露出する可能性があります。同様に筋注時も急速に注射すると同様の現象が生じると考えます。細い注射針を使用しても問題はないのでしょうか。
回答:まず、ファイザー社のワクチンはエマルジョン(水と油を界面活性剤で分散させたもので粒子径が大きい)ではなく、脂質ナノ粒子と言われるものであることをお伝えします。mRNAワクチンでは、活性本体(抗原タンパクの一部を細胞内で作製する)のmRNAを細胞内に効果的に送り込むために、種々の工夫がされています。確かに、mRNAを保護する構造は、極めて細い管などの中を早い速度で通過させることにより変化することがあり得ます。しかしながら、27Gの注射針を用いて、ワクチン溶液を吸い上げたり、筋肉内に注射する場合には、構造に影響を及ぼすことはありません。なお、インスリン用の注射針が不足することにならないように、インスリン用の注射針そのものを使うことには注意をお願いします。
 
質問13:結合抗体や中和抗体とIgG やIgMの関係がよくわからないので教えて下さい。
回答:「結合抗体と中和抗体」は、抗体の持つ性質を調べ議論する際に使われる言葉ですが、抗体は抗原に結合する性質を持っていることから、全ての抗体は結合抗体であると言えます。抗体の中でも、ウイルス感染を阻害する中和作用を持った抗体が、中和抗体と言われるものです。ただし、中和作用を持たず、意図した抗原に対して結合する抗体を中和抗体と区別するために結合抗体と言っている場合もありますので、注意が必要です。「IgGとIgM」は、構造的な特徴から抗体を区別して調べ議論する際に使われる用語です。抗体には、構造の異なるIgM、IgG、IgA、IgE、IgDなどの種類があります。
抗体は、新型コロナウイルスのような異物に結合する性質(力)を持っています。中和抗体は抗体の一部で、新型コロナウイルスのような病原体が細胞に感染する力を防ぐ(感染するという毒性的な力を中和する)性質を持つものを言います。
 IgMは、新型コロナウイルス異物が体内に始めて入ってきた時に速やかに(1~2週間)、免疫系の中の抗体産生細胞(B細胞)が異物に対して作られる抗体です。
 IgGは、IgMがつくられた後に、免疫系の中の抗体産生細胞(B細胞)が異物に対して作る抗体で、通常、IgMよりも異物に対する結合力が高く、作られる量も多いです。また、IgGを産生する細胞の一部がメモリーB細胞となり、次に異物が体内に入ってきた時に、即座にIgGを産生することが出来るようになります。
 IgMもIgGも、中和抗体の性質を持つことがありますが、状況により違いがありますので、調べないとわからないということになります。
 
質問14:感染しても発症しないで、自然治癒して、免疫力ができる確率について。
回答:感染して発症した方の抗体の産生や推移についての研究報告はありますが、発症されない方についての研究報告はないと思われます。それゆえ、お尋ねの確率についてはわかりませんが、新型コロナウイルスは一度感染しても再度感染する可能性があり、自然に感染するよりもワクチン接種の方が新型コロナウイルスに対する血中の抗体の値が高くなることが報告されているため、ワクチンを接種することを推奨する国もあります。感染後や治療後は、接種まで一定の期間をおく必要がある場合もありますので、いつから接種できるか不明な場合は、主治医にご確認ください。1)
1)厚生労働省新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0028.html
 
質問15:妊婦が新型コロナワクチンを接種したあと出産し、赤ちゃんが抗体を持っていたというニュースを聞きました。この際の抗体は、母乳から出た抗体ですか? そして何の抗体ですか? IgG抗体ですか?
回答:アメリカ産婦人科学会誌に研究報告があります。新型コロナワクチン接種を受けた妊婦のへその緒の血液中と母乳において、新型コロナウイルスに対する抗体が検出されたとのことです。
American Journal of Obstetrics & Gynecology 2021、https://doi.org/10.1016/j.ajog.2021.03.023
 また、妊娠後期の妊婦の方に新型コロナワクチンを接種することで、新生児に抗体が見つかったこと、妊婦から胎盤を通じて胎児側にIgGが移行したということが確認されたという研究報告があります。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-israel-vaccine-pregna-idJPKBN2B9030
J Clin Invest. 2021;131(13):e150319. https://doi.org/10.1172/JCI150319.
 なお、ファイザーとビオンテックは2月、共同開発したコロナワクチンについて、健康な18歳以上の妊婦4000人を対象に米・英などで臨床試験を開始したとのことです。
 
質問16:抗体とはなんでしょうか。
回答:抗体は、ウイルスや細菌などの病原体、あるいは病原体が産生する毒素などの抗原と結合して、抗原の病原性や毒性が発揮されないように処理をするタンパク質です。抗原とは、病原体の外側に存在する分子(あるいは分子構造)で、抗体を体内で作らせるものという意味です。
 
質問17:(新型コロナウイルスの)抗体検査の効果について教えて下さい。
回答:新型コロナウイルスに感染すると、体内に新型コロナウイルスに対する抗体が出来ますので、抗体検査によって過去に新型コロナウイルスに感染したことがわかります。また、ワクチン接種することにより、体内に新型コロナウイルスに対する抗体が出来ますので、抗体検査によってワクチン接種により抗体が産生されたのかが確認できます。
 ワクチン接種を受けたことのない方で感染した記憶もない方が抗体を持っているケースもありますが、この場合は、気がつかないうちに新型コロナウイルスに感染をした可能性もあります。
 
質問18:抗体検査は、いつ、どこで、誰が受けられるのでしょうか。
回答:医療機関によっては、新型コロナワクチン接種後に抗体が出来ているかを調べてくれるところがありますが、抗体検査は、新型コロナウイルス感染症の診断に用いることはできないことに注意が必要です。(本回答中では、医療機関の名前を記載は出来ません。web等で抗体検査を行っている医療機関を調べることや自宅で行う検査キットの情報もあるようです)
 
質問19:どの段階でどのような人が抗体検査を受けるべきなのでしょうか。
回答:現在、抗体検査について、国が検査を受ける基準や条件を提示していませんので、受けるべきということは言えません。ただ、新型コロナワクチンを接種しても、感染防御は100%ではないことがわかっていますので、心配な場合には、自費で病院において抗体検査を受けることは可能ですので、適切な医療機関で抗体検査を受けて,その結果をもとに医師に相談することは,判断の助けになると思われます。
 
質問20:既存の風邪のコロナとの交差免疫の程度はどこまでわかっているのでしょうか?
回答:風邪症候群のコロナウイルスと新型コロナウイルスとは交差免疫については、慶應義塾大学の微生物学免疫学教室の吉村昭彦教授が詳しく解説をされています。
http://www.epi-c.jp/sp2020/article_05.html コロナウイルスで感染した人には新型コロナウイルスと交差反応する抗体が存在はするが、コロナウイルスの感染から時間が経っているために、感染防御効果が十分でないと考えられるようです。
 
質問21:変異株もPCR検査でわかるようになりましたが、感染した変異株で治療方法が変わるのでしょうか?それとも、変異株に敏感になりすぎているだけなのでしょうか?
回答:治療方法についてのご質問ですが、予防を含めてお答えします。現在報告されている変異株は、感染力は高いことが報告されていますが、承認されている新型コロナワクチン接種により感染防御効果があることが示されています。しかし、新型コロナウイルスは、変異を繰り返すことも考えられ、その中には、体内で産生されている抗体により中和を受けにくい変異を持つようになることも考えておく必要があります。その場合、変異株に対する新しいワクチンを迅速に作製し提供できると製薬企業は述べています。なお、治療法は変異株に感染した場合も変わりません。
 
質問22:日本発のワクチン承認はいつ頃になりますか。
回答:日本企業では、アンジェス社がDNAワクチンの第2/3相臨床試験を行っていて、塩野義製薬は組換えタンパクワクチンの第1/2相臨床試験を実施中。KMバイオロジクス社と第一三共も3月から第1/2相臨床試験を行っています。
 ワクチンの開発のためには、有効性及び安全性を検証するための第3相臨床試験の実施が必要ですが、その実施は感染症の流行状況やワクチンの接種状況にも左右されるため、現時点では予断を許さない状況です。
 
質問23:アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬により,積極的に発熱を抑えることは、ワクチンの効果 (免疫応答に対して)に影響を与えますか。
回答:ファイザーなどが行った臨床試験において、発熱があった時には解熱鎮痛薬を使用しており、この臨床試験において抗体の産生と感染防御効果が得られていることをもとに承認されていますので、発熱を抑えるために解熱鎮痛剤を使用することが出来ます。
 厚生労働省のHP(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0007.html)に以下の記載がありますように、発熱や痛みが強い場合には解熱鎮痛薬を使用することをおすすめします。
 「ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬1)で対応いただくことも考えられますが、特に下記のような場合は、主治医や薬剤師にご相談ください。
 ・他のお薬を内服している場合や、妊娠中、授乳中、ご高齢、胃・十二指腸潰瘍や腎機能低下など病気治療中の場合(飲める薬が限られていることがあります。)
 ・薬などによりアレルギー症状やぜんそくを起こしたことがある場合
 ・激しい痛みや高熱など、症状が重い場合や、症状が長く続いている場合
 ・ワクチン接種後としては典型的でない症状がみられる場合(ワクチン接種後に起こりやすい症状や起こりにくい症状については、以下の2)をご覧ください。)
 なお、ワクチンを受けた後、症状が出る前に、解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服することについては、現在のところ推奨されていません。
 1)市販されている解熱鎮痛薬の種類には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンやロキソプロフェン)などがあり、ワクチン接種後の発熱や痛みなどにご使用いただけます。(アセトアミノフェンは、低年齢の方や妊娠中・授乳中の方でもご使用いただけますが、製品毎に対象年齢などが異なりますので、対象をご確認のうえ、ご使用ください。)
 2)ワクチン接種後に比較的起きやすい症状としては、発熱、頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒(さむけ)、関節痛などがあります。ワクチンによる発熱か、新型コロナウイルス感染症かを見分けるには、発熱以外に、咳や咽頭痛、味覚・嗅覚の消失、息切れ等の症状がないかどうかが、手がかりとなります。(ワクチンによる発熱では、通常、これらの症状はみられません。)」
 
質問24:アセトアミノフェンによる発熱や頭痛の予防投与は抗体ができないかもしれないということで推奨されていないと思いますが、その機序はわかっているのでしょうか。
回答:まず、新型コロナワクチン接種による発熱や頭痛に対する予防投与は推奨されていないことをお伝えします。
 新型コロナワクチンではなく、別のワクチンで解熱鎮痛薬を予防的に投与した臨床試験について日経メディカルにおいて報告がありますが、抗体価についての結果はまちまちとのことです。 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/202103/569360.html
 
質問25:ワクチンの種類を選んで接種することはできますか。
回答:現在、市区町村の実施するワクチン接種ではファイザー製のワクチンが、また、東京や大阪の大規模接種会場と企業・大学のワクチン接種ではモデルナ製のワクチンが接種されています。それゆえ、接種会場を選ぶことでワクチンの種類を選ぶことは可能ですが、2回の接種については同じワクチンを接種することになります。
 
質問26:副作用で、男女共に不妊になる可能性はありますか。
回答:日本産婦人科感染症学会および日本産婦人科学会より、「COVID-19 mRNA ワクチンの生殖に関する研究はまだ完了していませんが、現時点で胎児や胎盤に毒性があるとかワクチン接種を受けた人が不妊になるといった報告はありません。しかしながら、中・ 長期的な副反応については、今後も情報を収集する必要があります。」というコメントがあります。