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生薬の花

センリョウ
Sarcandra glabra (Thunb.)Nakai (センリョウ科)

センリョウの花

センリョウの花

センリョウの果実

センリョウの果実

マンリョウの果実

マンリョウの果実

九節茶(キュウセツチャ)

九節茶(キュウセツチャ)

 お正月のお飾りでよく目にする赤い実は、縁起物として愛されているセンリョウという植物です。花言葉は利益、祝福、富、財産ですが、どれもたくさん実をつけることから付けられています。
 センリョウは観賞用に栽植する常緑小低木で、高さ50~80 cmで群生します。葉は革質でつやがあり長さ8~18 cmほどで対生、先は鋭くとがり、縁には鋸歯があります。花は黄緑色で雌しべの背側に1本の雄しべが付着し、6~7月に咲きますが、葉の緑と同化してとてもわかりづらいです。そして、前年の枝の葉腋から伸びた新梢の先端に、2~3回分枝し、長さ2~4 cmの穂状花序に付きます。核果は冬に赤く色づき、まれに黄色になるものもあります。名前は、数多くの赤い実がなるヤブコウジ科マンリョウ(万両)に対し、実の数が少ないことからセンリョウ(千両)となりました。
 中国では、九節茶(キュウセツチャ)と呼ばれています。夏に採取し、乾燥した若い枝葉を使います。性味は辛、平。抗菌、消炎、去風除湿、活血し止痛の効能があるとされています。主に、肺炎や虫垂炎、胃腸炎を目的に使用されるようですが、日本ではあまり使いません。成分はクマロン、フラボン配糖体や精油が含まれています。
 センリョウ科はコショウ科、ウマノスズクサ科などの植物群とまとめて古草本と呼ばれています。これは、センリョウ科やコショウ科の植物が他のどの被子植物の化石よりも古い時代の地層から相次いで発見されたからです。記録上、被子植物の最古の化石クラウァティポレニテス(前期白亜紀の1億3000万~1億2000万年前)は、センリョウ科アスカリナ属の花粉とよく似ていました。また、花粉を作りだす花や葉も前期白亜紀の地層から発見されています。これらの発見を機にこれまで最も原始的な被子植物はモクレン目とされていましたが、本当は古草本であったと考えられています。
 来年のお正月に赤い実を見つけましたら、ぜひ太古の昔から屈強に負けず生きている植物と共生している事に感謝し、新型コロナに打ち勝った明るい未来を想像してみましょう。

(小池佑果、川添和義、磯田 進)


注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により、万一、体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

牧野 富太郎 (著)、『原色牧野植物大圖鑑 離弁花・単子葉植物編』、北隆館
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典1巻』、小学館
蕭 培根 (編集), 真柳 誠(翻訳編集)、『中国本草図録7巻』、中央公論社
朝日新聞社 編、『植物の世界 1、9巻』、朝日新聞社