創薬セミナー委員長からのメッセージ
第40回創薬セミナーの開催について
1984年に第1回が開催された創薬セミナーは,本年で記念すべき第40回を迎えます.1995年と2020年に創薬セミナーが開催されなかった年がありますが,これはそれぞれ,第1回AIMECSを古賀直文先生がAFMCプレジデントとして開催されたのと新型コロナウイルス感染症の蔓延によるものです.本年の創薬セミナーは,2025年7月16日から18日に長野市松代町にて開催されます.
過去39回の歴代講演者と講演タイトルの一覧を眺めていると,この41年間で特に創薬が対象とする物質の種類等には変遷がありますが,創薬セミナーの根底に息づく,病気で苦しむ患者や家族に優れた薬を一刻も早く届けるために最先端の情報を分野の垣根なく取り入れたい,というスピリットは不変であることを感じます.この素晴らしいセミナーを創始し継続してこられたすべての関係者(参加者および組織委員)の方々に心から敬意を表するとともに,今後も創薬の中枢を支える人材の育成に貢献する有意義な場としての役割を担っていきたいと考えております.
今年の創薬セミナーも,創薬に関連する多様な分野から第一線の講演者をお招きしてご講演をいただきます.創薬セミナーのハイライトである社長講演では,塩野義製薬㈱の手代木 功 代表執行役会長兼社長CEO に「社会・医療ニーズに応える感染症創薬」というタイトルでご講演いただきます.圧倒的なスピードで開発・上市に至ったCOVID-19治療薬Ensitrelvirやその後の取り組みなどについて,力強いメッセージを拝聴できることと思います.また特別講演として,厚生労働省大臣官房審議官の佐藤 大作 氏をお招きして「日本における医薬品規制の立場での諸課題への取組」というタイトルでご講演いただきます.モダリティが多様化する中,薬禍を決して繰り返してはならないという官の意気込みを拝聴できるものと思います.製薬企業,ベンチャー企業からの招待講演として,「標的タンパク質分解誘導剤探索プラットフォーム「RaPPIDSTM」とその成果」(ファイメクス㈱:宇都 克裕 先生),「中外製薬の革新的抗体技術について」(中外製薬㈱:倉持 太一 先生),「RNA制御ストレスを標的とした新しい抗がん薬の創出に向けたChordiaの挑戦」(Chordia Therapeutics㈱:三宅 洋 先生),「MC1R作動薬MT-7117(dersimelagon phosphoric acid)の創製」(田辺三菱製薬㈱京都大学:山元 康王 先生),「Preferred Networksが取り組むAI創薬」(㈱Preferred Networks:佐藤 秀行 先生)が予定されています.アカデミアからは,「不可能を可能にする新輝不老反応の開発を目指して」(名古屋大学:布施 新一郎 先生),「空間オミクス解析 ―代謝メカニズムの in situ イメージング―」(京都大学:杉浦 悠毅 先生),「細胞内動態制御法から革新的ナノ医薬品の創出へ」(北海道大学:原島 秀吉 先生)の講演を行っていただきます.また恒例の自由討論会を,少人数でのディスカッショングループを構成して開催します.
創薬セミナーには,将来,創薬の世界をリードすることを期待されている方々が数多く参加されます.今日ではどの領域もそうだと思いますが,世界をリードしていくためには柔軟な発想が必須で,柔軟な発想を発信し続けるためには,自分の専門領域にたこつぼ化することなく広くアンテナを張っておくことが必要最低限になると思います.本セミナーが,将来のリーダーに対してそのような機会を提供できることを確信しております.また,そのためにも分野を問わず,製薬企業,バイオベンチャー,アカデミアから多くの皆様方の参加を心待ちにしております.今の種が10年後の大きな花へと結実するように,参加者全員で創薬セミナーを盛り上げて,楽しみましょう.
創薬セミナー 委員長 金井 求(東京大学大学院薬学系研究科)

創薬セミナー 前委員長 王子田 彰夫 (九州大学大学院薬学研究院)