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本学会より推薦の山田科学振興財団「2022年度研究援助」採択者について

2022/08/23

本学会推薦の山田科学振興財団「2022年度研究援助」に2名が採択されました。
 
 2022年8月5日、自然科学の基礎研究を助成振興し、我が国の科学研究の向上発展と人類の福祉に寄与することを目的とした、独創的な基礎研究が自然科学の幅広い分野で遂行されることと、各研究分野相互の対話・交流が促進されている、基礎研究(物理、化学、生物・医学)で萌芽的・独創的な研究を対象に採択される、山田科学振興財団2022年度研究援助に、本学会から推薦した2名が受賞しました。
 
 「補酵素NADを基質とする新規生合成酵素の機能解明と応用」
 淡川孝義(東京大学大学院薬学系研究科・准教授)
 
 特異な天然物、抗生物質SB-203207、抗がん化合物アルテミシジンは、α二置換アミノ酸、スルホンアミドなど、医薬品や有機触媒などで汎用される骨格を持つため、その生合成機構を解明し、利用することで、医薬化学に有用な骨格を持つ化合物を生み出すことができる。申請者は近年、アルテミシジン生合成経路において、補酵素NAD、SAMを基質として、二回のC-C結合形成を触媒し、骨格形成に関わる新奇PLP依存性酵素(SbzP)の同定に世界に先駆けて成功した。このホモログ遺伝子は、医薬品生産者として名高い放線菌などのグラム陰性、グラム陽性菌に幅広く分布し、それぞれ二次代謝産物合成酵素遺伝子とクラスターを形成する。よって、本研究では、この特異な酵素SbzPとスルホンアミド転移、アミノアシル結合形成に関わる酵素群のX線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡解析による精密機能解析と反応改変に取り組む。さらに修飾酵素群と組み合わせて、NAD由来酵素反応生成物を修飾し、抗腫瘍活性を持つ新規薬用活性化合物を合成する。本研究により補酵素由来の新規天然物群生合成機構を明らかにし、その利用による新規創薬シード合成基盤を構築する。

 「新規環状アミノ酸のLate-Stage構築法の開発とペプチド配座への影響」
 生長幸之助(産業技術総合研究所触媒化学融合研究センター・主任研究員)
 
 独自開発したアミノ側鎖選択的変換法を、新規環状アミノ酸(プロリン模倣体)のLate-Stage構築法へと接続し、ペプチド骨格に配座規制を付与するための新たな反応化学を開拓する。 生体適合物質でもあるペプチドは、バイオマテリアルや医薬品といった生体志向応用に頻用される一方、膜透過性・代謝安定性の低さなどに課題を抱える。柔軟なペプチドに人工骨格を導入して配座規制を与える手法が一つの解決策とされている。この物質開発戦略はまた、ペプチドの機能特性(生物活性・分解耐性・自己集積能など)を革新しうる新規構造モチーフの提供にもつながる。

【山田科学振興財団】
2022年度研究援助 採択者