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2022/07/29

創薬促進検討委員会の提言について

7学会合同感染症治療・創薬促進検討委員会 提言
パンデミック・サイレントパンデミックに対する治療薬・ワクチン・検査法の
研究開発を継続できる制度の必要性
― 提言発表の背景と目的 ―
 
公益社団法人日本薬学会 会頭 佐々木茂貴
7学会合同感染症治療・創薬促進検討委員会 委員長  舘田 一博
 
 ペスト、コレラ、インフルエンザ流行の歴史からもわかるように、感染症はいつの時代も人類の脅威となりうる疾患である。我々は今、21世紀で初めて"新病原体によるパンデミック"として新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験している。約2年半で5億7000万人を超える人が感染し、約640万人の死亡が報告されている。たとえこのパンデミックが収束したとしても、また次のパンデミックが出現することを覚悟しておかなければならない。また、サイレント・パンデミックと称される薬剤耐性菌(AMR)の問題も喫緊の課題である。インドのニューデリーで見つかったカルバペネム耐性腸内細菌はその1例であり、この細菌から新しい耐性因子"NDM型βラクタマーゼ"が見つかり世界を震撼させたことは記憶に新しい。
 COVID-19に対する治療薬・ワクチン開発は欧米がリードする形で進行した。特に世界で初めて開発されたmRNAワクチンは画期的であり、本ワクチンの開発で何百万人もの命が救われたといっても過言ではない。欧米は、本ワクチンの開発を危機管理の視点で進めており、10年以上も前からその開発を支援してきた。一方で本邦におけるmRNAワクチンの開発はどうか? 医薬創薬技術において決して劣らない日本企業であるが、残念ながら欧米諸国に大きく水をあけられている状況となっている。
 パンデミック、サイレント・パンデミック感染症に対する治療薬等の研究開発の難しさは世界が直面する問題である。投資規模、開発までの時間、成功確率の低さ、たとえ成功したとしても利益を回収できないリスクなど、他の疾患とは異なる問題が存在する。ビジネス原理だけでは進めることのできない感染症治療薬・ワクチン・診断法の開発には、危機管理と安全保障の視点が重要であり、すでにいくつかの国は新しい政策モデルの導入を検討している。その1例が本提言で示されている"プル型インセンティブ"である。2023年には広島でG7サミットが開催される。その議題にパンデミック、サイレント・パンデミックが盛り込まれることは確実である。日本が感染症治療薬・ワクチン・診断法の開発を通して世界に貢献できる国になることを祈念して本提言を提出させていただいた。
 
  7学会合同感染症治療・創薬促進検討委員会 提言「パンデミック・サイレントパンデミックに対する治療薬・ワクチン・検査法の研究開発を継続できる制度の必要性」