ツワブキは国内の本州、四国、九州の海岸付近によく見られ、朝鮮半島や中国でも自生しています。ツワブキの根茎を乾燥したものを生薬「橐吾(タクゴ)」といいます。
ツワブキはキク科ツワブキ属の植物で、学名「Farfugium」は「列(farius)」+「駆除(fugus)」をラテン語化したもので、キク科のフキタンポポ(Tussilago farfara L.)の古名に由来しています。中国ではツワブキを「大呉風草(ダイゴフウソウ)」といい、生薬名は「蓮蓬草(レンホウソウ)」と呼ばれています。和名のツワブキは諸説あり、葉が丸く、艶があり、ハート型でフキの葉に似ていることから「ツヤブキ」の意味でこの名がつきました。
ツワブキの花茎は60cmほどになり、根茎は太く、葉は円状腎臓形で厚く、上面は深緑をしています。花期は10~12月で、黄色の頭花を散房状につけます。性味は、涼、苦とされ、成分はピロリジンアルカロイドのセンキルキン、ヘキセナール、タンニンなどが含まれています。薬理作用として、多くのヘキセナールを含んでいる葉は抗菌作用、根茎は健胃、食中毒、下痢に対する効果が報告がされています。主な使い方として、打撲、おできなどの腫れもの、切り傷、ものもらいに対し、生の葉を炙り軟らかくなったらちぎって患部に貼ります。また、生薬タクゴは健胃、食あたり、下痢の際に10~20 gを400 mLの水で煎じて3回に分け服用します。九州では過去にツワブキの葉とガジュツ根茎を粉末にして胃腸薬として利用していたと言われていますが、現在はガジュツやウコンを用いています。ツワブキよりも大きいオオツワブキ(F. Japonicum (L.) Kitam. Var. giganteum (Sieb. Et. Zucc.) Kitam.)が九州で自生しており、こちらの地域ではオオツワブキの葉を塩漬けにして食用にする習慣があるそうです。ツワブキに含まれているピロリジンアルカロイドは肝毒性を示すため、灰汁出しを行い食用とします。一方、晩秋から初冬にかけて咲く黄色い花は殺風景な庭園に彩を添え、観賞用にとても人気があります。そのため俳句の世界では冬の季語として用いられ、「石蕗(つわぶき)の花」の名で読まれています。(小池佑果、高松 智、磯田 進)