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生薬の花

ナルコユリ
Polygonatum falcatum A.Gray(ユリ科)

ナルコユリの花

ナルコユリの花

アマドコロの花

アマドコロの花

左:ナルコユリの茎<br>右:アマドコロの茎

左:ナルコユリの茎
右:アマドコロの茎

上:ナルコユリの根茎<br>下:生薬 黄精(オウセイ)

上:ナルコユリの根茎
下:生薬 黄精(オウセイ)

 ナルコユリはユリ科の多年草で、北海道から九州、朝鮮半島の山野に自生します。細長いつりがね状の白い花が、互い違いについた葉のそれぞれの根本に房のように付いており、その様子が、田んぼで稲をついばむ雀を追い払うための道具である「鳴子」に似ることが和名の由来です。山菜としても知られ、春に出た新芽を食用とします。よく似た植物として、同属のアマドコロ (P. odoratum (Mill.) Druce) があります。ナルコユリの葉はササのように細く、茎を触るとなめらかであり、花と花柄の接点に突起があるのに対し、アマドコロは葉が幅広く、茎を触ると角ばった感じがあり、花と花柄の接点に突起はありません。また、ナルコユリは5-6月に花が咲くのに対し、アマドコロはそれよりも早い4-5月に花が咲く点が異なります。ナルコユリやアマドコロは園芸店で販売されていることもありますが、これらはしばしば混同されているようです。
 中国にはナルコユリの仲間であるカギクルマバナルコユリ(P. sibiricum Delar. ex Redouté)が分布しており、この根茎を、通例、蒸して乾燥させたものが「黄精(オウセイ)」という生薬です。日本では古くからナルコユリが基原植物の代用として用いられてきました。黄精は脾を補い、肺を潤す生薬であると言われ、滋養強壮を目的として肺結核や糖尿病に使用します。漢方処方では黄精湯などに配合されています。主要成分として、トリテルペン配糖体のシビリコシドや、D-フルクトースやD-マンノースなどからなる粘液多糖質を含んでおり、煎じ液は血糖降下作用や血中コレステロール降下作用、抗菌作用を示すことが報告されています。黄精は民間薬としても使用されており、精力減退時や病後回復の滋養強壮を目的に、煎じたり酒に漬け込んだりしたものが服用されています。また、市販されている栄養ドリンクに黄精が配合されていることもあるようです。耳なじみのない生薬かもしれませんが、意外と服用したことがある人が多いかも知れませんね。  
(伊藤ほのか、川添和義、小池佑果、磯田 進)

注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著、『和漢薬百科図鑑(Ⅰ)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館
伊藤美千穂・北山隆 監修、原島広至 著、『改訂第3版 生薬単』、丸善雄松堂