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生薬の花

ミツバアケビ
Akebia trifoliata Koidz.(アケビ科)

ミツバアケビの花

ミツバアケビの花

アケビの花

アケビの花

ミツバアケビの果実

ミツバアケビの果実

木通

木通

 秋になると紫色の甘い実を付けるアケビの花は春に咲きます。最近ではあまり食べられなくなりましたが、実が開くと白い果肉とたくさんの黒い種子があり、果肉にはほんのりと甘みがあるので、かつては里山のフルーツでした。一方、種子には油分が多く、東北地方では食用油の原料としても利用されていました。葉をよく見てみると5枚のものと3枚のものがあります。3枚の葉が出るアケビはミツバアケビと呼ばれ、四国を中心に広く自生しています。学名のtrifoliata も「3枚の葉の」という意味です。花は濃い紫色の3枚の花弁があり、雌雄が別になっていて、雄花は房状に咲き、その付け根あたりに雄花より大きな雌花が数個開きます。葉は柔らかく、三出複葉で小葉は卵形から長卵形で、葉縁にはごく浅い切れ込みがあり波打っています。一方、葉が5枚のものはアケビ(A. quinata Decne.)またはゴヨウアケビ(アケビとミツバアケビの自然交配種)です。アケビの花も単性花ですが、花弁は薄い紫から白色で、葉はやや固く革質で葉縁には切れ込みがないので区別することができます。
 いずれも、つる性の茎を木通として生薬にします。『神農本草経』には「通草」として記載されているのですが、現在、「通草」は一般にカミヤツデ(ウコギ科)の茎の髄を指します。木通にはトリテルペンサポニンであるアケボシド類が含まれており、漢方では利水や痛経作用を期待して、五淋散や竜胆瀉肝湯、通導散などに配合されています。民間でも月経不順などに利用されることがあるようです。薬用以外にも、茎はよくしなって加工がしやすいことから、カゴに細工したりクリスマスリースに使ったりします。また、現在は使われなくなったアケビ油の機能性についての研究も進められていて、今後、アケビの新しい利用法が開発されるかも知れません。
 
(川添和義、小池佑果、磯田 進)

注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著、『原色和漢薬圖鑑(下)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館
池本敦(2018).『オレオサイエンス』、18(3):107-112