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生薬の花

ハクモクレン
Magnolia denudata Desr.(モクレン科)

ハクモクレンの花

ハクモクレンの花

辛夷 (ハクモクレン)

辛夷 (ハクモクレン)

タムシバの花

タムシバの花

辛夷 (タムシバ)

辛夷 (タムシバ)

 庭木としてよく植えられるハクモクレンは、春早く、葉のまだない枝先に白い大きな花をつけることから、「迎春」という別名があります。中国原産で、かなり古くにわが国にもたらされたと考えられています。高さ5m~15mの落葉高木で、葉は全縁で厚く、花びらは9枚みられます。ただ、このうちの3枚は萼片で、花弁と同じ形をしています。咲くとほんのりと香りが漂います。日本に古くから自生するコブシやタムシバも春先に白い花をつけ、ハクモクレンによく似ていますが、コブシは咲いた花の付け根に小さい葉がみられます。また、タムシバは6枚花びらの下側に、それを小さくした3枚の萼片があることから区別ができます。

 この花のつぼみを辛夷しんいという生薬にします。まだ、ほう(つぼみを包んでいる殻、苞葉ともいう)が開かないうちに取って使います。この苞には細かい毛が一方向にたくさん生えていて、触るとネコなどの小動物に触れたような感触があります。日本薬局方では辛夷の基原として、ハクモクレン以外に、コブシ、タムシバなど5種類を規定していて、いずれも、噛むと辛味があるのでこの名前があります。一方、よく似ているモクレンには辛味がなく、辛夷としては利用しません。辛夷にはリモネンやシトラールなどの精油の他、コクラウリン、レチクリンなどのアルカロイドが含まれています。抽出エキスには血圧降下作用や抗炎症作用が報告されていますが、漢方では鼻づまりを目標として辛夷清肺湯や葛根湯加川芎せんきゅう辛夷などに配合されます。また、鼻づまりによる頭痛や頭重感にも効果があるとされます。民間では、薄荷やそう耳子じし(オナモミの実)、白芷びゃくし(ヨロイグサの根)と一緒に粉末にして飲むことで蓄膿症や鼻炎に効果があるとしています。  
(川添和義、小池佑果、磯田 進)

注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著、『原色和漢薬圖鑑(下)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館