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生薬の花

ハチク
Phyllostachys nigra (Loddiges) Munro var. henonis (Bean) Stapf (イネ科)

ハチクの葉

ハチクの葉

ハチクの稈

ハチクの稈

竹(マダケ)の花

竹(マダケ)の花

竹筎・竹茹(チクジョ)[原植物:マダケ]

竹筎・竹茹(チクジョ)[原植物:マダケ]

今年最初に紹介する植物は、我々にとって馴染み深い竹の一種であるハチク(淡竹)です。ハチクは中国原産の多年生常緑植物で、直径は3〜10 cm、高さは10〜15 mほどで、中空の円筒形で節があり、葉は多数の小枝の先につき皮針形をしています。花はイネやコムギ(前回の「生薬の花」でとりあげています)に似ており、無花被(がく片と花弁がない)で穎(えい)から雄ずいが外に向かって垂れ下がっているのが特徴です(写真はマダケの花)。竹は開花周期が数十年〜百数十年と非常に長いことから、開花すると珍事としてニュースなどでよく取り上げられています。(ハチクの開花周期は、前回の開花記録から約120年といわれています。数年前から全国各地で開花が確認されていますので、運が良ければ花に出会えるかもしれません)。竹林面積に占める割合は、モウソウチク、マダケよりも少ないですが、これらと合わせて日本三大有用竹と呼ばれており、抹茶を点てる際に用いる茶筅(ちゃせん)の材料などとして利用されています。ハチクの形態はマダケとよく似ていますが、マダケと比べると全体的な色が白い一方、2本ある節の隆起線は低く黒っぽいという特徴があります。また、市場に出回ることは少ないですが、ハチクのタケノコは、一般に商品として流通しているモウソウチクのタケノコより美味といわれています。
 ハチクの薬用部位は稈(節と節の間が中空の茎で「かん」と読みます)の内皮と葉で、生薬名は前者が竹筎・竹茹(チクジョ)、後者が竹葉(チクヨウ)といいます(いずれも局外生薬)。また、稈を火であぶった際に流れ出る液汁も竹瀝(チクレキ)という生薬として利用されています。竹筎は、肺、胆、心の熱を除く作用があるとされており、咳嗽、不安、不眠などを解消する目的で清肺湯、竹筎温胆湯などの漢方処方に配合されています。竹葉も同様に清熱作用を有しており、肺の熱を除き咳嗽を改善する目的で竹葉石膏湯に配合されています。竹筎温胆湯や竹葉石膏湯は、風邪の回復期に咳が長引く場合に利用されるので、今の時期に薬局やドラッグストアなどでこれらの処方を目にしたことがある方も多いかもしれません。
 昨年末はFIFAワールドカップでサッカー日本代表が「破竹」の勢い*で強豪国を破り、大いに盛り上がりました。今年もスポーツに限らず様々な分野で破竹の勢いと呼ぶに相応しい活躍が見られることを期待したいところですが、植物のハチクの漢字表記は「淡竹」ですので勘違いしないようご注意ください。
*破竹(はちく)の勢い:タケ類は最初の一節を割ると後は一気に割れるところから、勢いが激しくてとどめ難い様子を表す慣用句
(栗本 慎一郎、小池 佑果、川添 和義、磯田 進)
注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。使用によって、万一、体調が悪くなった場合には医師にご相談ください。

[参考図書]

難波恒雄 著、『原色和漢薬図鑑(上)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館
農林水産省ホームページ https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2103/spe1_01.html
林野庁ホームページ https://www.rinya.maff.go.jp/index.html