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生薬の花

クロモジ
Lindera umbellata Thunb(クスノキ科)

クロモジの花

クロモジの花

クロモジの枝

クロモジの枝

生薬 チョウショウ

生薬 チョウショウ

クロモジ(爪楊枝)

クロモジ(爪楊枝)

 「クロモジ」と聞くと、爪楊枝を思い浮かべる方がいらっしゃると思います。実は、クロモジというのはクスノキ科の植物の名前です。古くから芳香のあるクロモジで爪楊枝を作っていたことから、その代名詞となったそうです。クロモジは山地に生える落葉低木で、本州から九州、及び中国大陸に分布しています。高さは2〜3 mになり、樹皮は平滑で暗緑色に黒い斑点があります。葉は枝の上部に互生し、長さ5〜10 cmで、淡黄緑色の花を新葉とともに春に散形花序につけます。花被は6枚で雌雄異株であり、雄花は雄しべ9本、やくはめくり上がるように開きます(弁開)。枝葉に芳香があり、油をとり香水の原料となります。和名は樹皮の斑紋を文字になぞらえてクロモジと名付けられました。
 薬用に使われるのは枝葉と根皮で、それぞれの生薬名をチョウショウ(釣樟)、チョウショウコンピ(釣樟根皮)といいます。枝葉は8〜9月に採集し、陰干しにします。根は掘り上げ、水洗いしたのち芯を除いて陰干しにします。枝葉と根皮には芳香性のシネオール、リナロール、α-ピネンが含まれています。枝の水溶液は、去痰作用を示すことが知られています。民間では脚気、急性胃腸炎にチョウショウ3〜5 g(1日量)を煎じ服用したり、止血には粉末を用いたり、外用、皮膚病、保温に浴湯料として利用されているようです。
 クロモジの仲間には、ケクロモジ、ミヤマクロモジ、オオバクロモジがあり、葉の大きさと表裏の毛の有無で見分ける事ができます。葉の表裏に毛があるのはケクロモジ、裏に長い毛があるのはミヤマクロモジ、表裏に毛がないのがオオバクロモジです。クロモジは、成長後に裏の毛が無くなります。これから暖かくなりますので、山歩きなどで新葉の下に淡い黄色の花を見つけた時には、ぜひ葉をよく観察してどのクロモジかを見分けてみてください。
(小池佑果、栗本慎一郎、川添和義、磯田 進)

[参考図書]

三橋 博 監修、岡田 稔 編、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
牧野 富太郎、『原色牧野植物大圖鑑 離弁花・単子葉植物編 』、北隆館
伊沢 一男、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社