生薬の花

サザンカ Camellia sasanqua Thunb. (ツバキ科)

サザンカの花 

サザンカの花 

サザンカの落花

サザンカの落花

サザンカの果実

サザンカの果実

 秋が深まり、冬の訪れを感じる頃、花の少ない時期に人目をひくのがサザンカの花です。古くから庭木や生け垣として利用されてきた日本原産の常緑小低木です。サザンカは四国、九州の山中、沖縄諸島に野生し、白い花が咲きますが、本州のものは栽培品で、薄紅色を主に、さまざまな変化に富んだ色合いがあります。花期は10~12月で、枝先に花径5~8 cmの大きな5弁花をつけます。同じ科のツバキ(椿)によく似ていますが、ツバキの花は花全体が落下するのに対し、サザンカは花びらが一枚一枚散って行きます。
 果実は翌年9~10月に熟し、果皮は3枚に裂けて開き、扁球形で暗褐色の種子を数個出します。種皮を除いた種子から得られるサザンカ油はツバキ油と同様に、毛髪香油や軟膏基剤に用いられます。
 鹿児島、宮崎県地方では古くよりサザンカの新芽を製茶して飲み、香りがよいことから、香袋としています。
 サザンカは漢字で「山茶花」と表記されますが、ツバキの中国名「山茶花(さんさか)」が誤記により「茶山花(ささんか)」になり、それが訛って『さざんか』になったとも言われています。中国名は「茶梅」で、学名も英名もサザンカ(sasanqua camellia)です。
 サザンカは東京都の江東区、杉並区、神奈川県横浜市、千葉県船橋市をはじめ、全国で多くの市町村の花や木に制定されています。冬の準備にはいる晩秋から咲き出すため、その花の美しさは特に人の心をとらえます。ところで、サザンカといえば、童謡の「たきび」の二番の歌詞に登場することでもよく知られています。懐かしい地方の冬の情景の歌のようですが、実は東京都中野区上高田の農家が発祥の地だそうです。
 冬の花の代名詞であるサザンカは、春先にはツバキに主役の座を譲ります。
(高松 智、磯田 進)

[参考図書]
牧野 富太郎 著、『牧野新日本植物図鑑』、北隆館
牧野 富太郎 著、『原色牧野植物大図鑑 (合弁花・離弁花編)』、北隆館
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第7巻』、朝日新聞社出版局
伊澤 一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
中野区ホームページ、「中野区の魅力・なかの写真資料館」
箱田 直紀、「サザンカの名前とその変遷」、国立歴史民俗博物館・くらしの植物苑だより、No.327(2013)