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生薬の花

ゴマノハグサ
Scrophularia buergeriana Miquel(ゴマノハグサ科)

ゴマノハグサの花

ゴマノハグサの花

玄参[(上)原植物:ゴマノハグサ、(下)原植物:S. ningpoensis]

玄参[(上)原植物:ゴマノハグサ、(下)原植物:S. ningpoensis]

[(左)ゴマノハグサの葉、(右) ゴマノハグサの果実]

[(左)ゴマノハグサの葉、(右) ゴマノハグサの果実]

S. ningpoensisの花

S. ningpoensisの花

 ゴマノハグサは、湿り気のある草地にはえる多年草で、本州、九州および朝鮮半島、中国に分布しています。草丈は1.2mほどで、茎は直立して四角ばり、夏に茎の上部に花穂を出し、多数の黄緑色の小型の花をつけます(集散花序)。がくは5つに裂け、花冠はつぼ型で先は唇形で5つに裂けています。葉は長卵形で鋸歯があり、対生します。ゴマノハグサという和名は、葉の形が胡麻の葉に似ていることに由来しています。
 本植物の薬用部位は根で、生薬名を玄参(ゲンジン)といい、主要成分としてフェニルプロパノイドの桂皮酸やイリドイド配糖体のハルパゴシドなどを含んでいます。前回紹介した丹参(タンジン)が「赤い人参」という意味で名付けられたと考えられているのに対し、ゴマノハグサの根は黒色で肥大することから「黒い人参」という意味で名付けられたと考えられています(「玄」という字は「黒」を意味します)。また五行説では、黒は五臓の1つである「腎」を表しており、玄参は腎に働き、滋陰、清熱、除煩などの作用を示すとされています。江戸時代に小野蘭山が、玄参の原植物としてゴマノハグサを当てたことから、日本ではゴマノハグサの根が用いられてきましたが、後に中国産の玄参は同属植物のS. ningpoensisの根を基源とするものであることがわかりました。現在、市場で流通している玄参の多くは、中国産のものとなっています。また、中国ではゴマノハグサの根は「北玄参」と呼ばれ区別されています。
 玄参は、熱病による身体のほてり、咽頭痛、鼻炎、便秘などを改善する生薬製剤に配合されます。玄参が配合されている漢方処方には、加味温胆湯、清熱補気湯(いずれも一般用漢方製剤)などがあり、前者は胃腸機能の衰えや精神的ストレスなどによる不眠症・神経症、後者は口内炎、口渇、舌の荒れや痛みの治療に使用されます。
(栗本 慎一郎、小池 佑果、川添 和義、磯田 進)
 
注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。使用によって、万一、体調が悪くなった場合には医師にご相談ください。

[参考図書]

難波恒雄 著、『原色和漢薬図鑑(上)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館