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生薬の花

フジバカマ
Eupatorium fortune Turez. (キク科)

フジバカマの花

フジバカマの花

生薬 蘭草(ランソウ)

生薬 蘭草(ランソウ)

 日本には、春の七草があるように、秋の七草があります。春の七草は七草粥にして楽しみますが、秋の七草は花を楽しむ植物が集められています。今月は、秋の七草の中で小さなピンク色の可愛らしい花を多数つけるフジバカマをご紹介します。
 フジバカマは本州関東地方以西、四国、九州及び朝鮮半島、中国に分布し、川辺の土手、斜面などに生育し、観賞用にも栽培される多年草です。草丈は1~1.5 m、茎は直立し、円柱形で下部は無毛、下葉は開花時には枯死します。中葉は対生して多くは3深裂、裂片は長さ8~13 cmです。花期は8~9月で、茎の先に淡紅紫色の頭花を散房状に密生します。
 花期に地上部の全草を刈り取り、風通しの良い場所で陰干しにしたものは、ランソウと呼ばれます。蘭草の水性エキスには血糖降下作用、利尿作用があるとされ、利尿、解熱、通経薬として糖尿病、浮腫、月経不順に用いられます。また、神経痛、皮膚のかゆみなどに外用し、浴湯料などにも用いられます。
 刈り取ったものを半乾きの状態にすると、桜餅のような香りを生じます。これは、フジバカマに含まれているクマリン配糖体が加水分解され、オルトクマリンが生成されるからです。そのため中国では香袋や入浴時に湯に浮かべ、その香りを楽しんでいます。
 日本でも万葉集にも歌われているほど、古くから親しまれているフジバカマですが、河川の氾濫や改修などにより生育環境の悪化しその数が激減したため、環境省では2018年に準絶滅危惧種に指定しました。兵庫県加古川市にはフジバカマが多く自生していたそうですが、今ではあまり見られなくなったため、地元の企業が中心となり、保全活動を行っています。

(小池佑果、川添和義、磯田 進)

注)この植物の利用は専門的な知識を有します。安易に利用しないでください。利用により、万一、体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

・三橋 博 監修、岡田 稔 編、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
・伊沢 一男著、「薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて」、主婦の友社
・朝日新聞社 編、『植物の世界 1巻』、朝日新聞社
・日本のレッドデータ 検索システム http://jpnrdb.com/index.html(アクセス 2021-7-23)
・朝日新聞DIGITAL, 2019. 10. 16:https://www.asahi.com/articles/ASMBC66J5MBCPIHB02C.html