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生薬の花

マタタビ
Actinidia polygama (Siebold & Zucc.) Maxim.(マタタビ科)

マタタビの両性花

マタタビの両性花

マタタビの雄花

マタタビの雄花

木天蓼(マタタビの虫こぶ)

木天蓼(マタタビの虫こぶ)

虫の入っていない果実

虫の入っていない果実

 梅と言えばうぐいす、モミジには鹿。では、マタタビと言えば...やはり、ネコでしょう。昔からネコの「パートナー」として知られているマタタビですが、実は、我々人間を含め様々な生き物と関係がある植物なのです。
 日本各地の山地に自生するつる性の植物で、初夏、表側だけ白くなった葉がよく目立ちますので生えていれば見つけるのは意外と簡単です。その葉陰を見るとウメによく似た白い清楚な花が付いているのがわかります。よく観察すると花にはいくつかの種類のあることがわかります。マタタビは雌雄異株ですので株によって雄花と雌花が別々に付くはずなのですが、実は雌株に付く花のほとんどはめしべとおしべが揃っている両性花です。とてもまれに、花弁がなくがくと子房のみが目立つ雌花が付きます。夏も盛りになると結実します。よく見ると小さい楕円形のものと丸く大きく膨らんだものを見つけることができます。楕円形の実は味噌漬けなどにして食用にする地方もあるのですが、薬用にするのは丸く膨らんだ果実の方です。もくてんりょうと呼ばれ、唐代の『新修本草』に名前が見えます。日本でも古くから関節の痛みや疲労回復の妙薬として利用されていて、「マタタビ」という名前も、これを服用すると、いくら疲れていても又、旅ができるほど回復することからつけられたとも言われています。
 木天蓼がこのような形をしているのは、マタタビミタマバエなどの昆虫が雌花の子房に産卵したためなのです。マタタビミフクレフシと呼ばれるこの変形した果実は昆虫のゆりかご(虫こぶ=虫癭ちゅうえい)となっているわけです。薬用とするには、秋、果実が少し色づいた頃に採集して熱湯に浸け、中の虫を殺してよく乾燥します。煎じるととても苦いのですが、ホワイトリカーなどに氷砂糖と一緒に漬け込み、半年ぐらいすると濃い褐色の少し苦い薬用酒ができます(薬用酒は個人でお楽しみ下さい)。冷え性や関節痛、神経痛、疲労などに効果があるとされています。
 私たちのよく知っている果物にマタタビととても近いものがあります。キウイフルーツです。同じマタタビ科なので花もよく似ていて、果実はまさにマタタビの果実を大きくした感じです。意外なのですが、原産地は中国です。これを導入したニュージーランドが改良し栽培したものを海外に輸出する際に、現地にしかいない珍しい鳥、キウイの名前を取って特産品としたのです。
 このように、マタタビはネコだけでなく昆虫や人間にも素晴らしい恩恵を与えてくれています。因みに、マタタビに含まれるマタタビラクトンと呼ばれる化合物がネコを夢中にすると考えられてきたのですが、最近になって、化学構造のよく似たネペタラクトールがネコを酔わしているということがわかりました。この匂いが蚊を寄せないので、ネコはそれを利用して蚊に刺されないようにしているという研究結果も興味深いものです。

(川添和義、小池佑果、磯田 進)

注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により、万一、体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。また、20歳未満の方は薬用酒でも飲めませんのでご注意下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著,『原色和漢薬図鑑(上)』,保育社
牧野富太郎 著,『牧野新日本植物図鑑』,北隆館
三橋博 監修,『原色牧野和漢薬草大圖鑑』,北隆館
岩手大学プレリリース,https://www.iwate-u.ac.jp/cat-research/2021/01/003871.html