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生薬の花

ノダケ
Angelica decursiva Franchet et Savatier (Peucedanum decursivum Maximowicz)(セリ科)

ノダケの花

ノダケの花

ノダケの果実

ノダケの果実

ノダケの根

ノダケの根

前胡(紫花前胡)

前胡(紫花前胡)

 およそ1メートル以上になる比較的大きな植物で,関東以西の丘陵地や山林などにみられ,晩夏から初秋にかけて花をつけます。セリ科の植物ですので花は散形花序となり茎の上部に大きく開きますが,暗紫色の小さな花なのであまり目立ちません。それよりも,葉柄が基部で大きく膨らみ茎を抱いて葉鞘をつくっているのが特徴的です。上の方では葉鞘がやや紫色を帯びることが多いので遠くからでもわかる場合があります。葉は羽状複葉となり,小葉はさらに深裂しています。稀に白い花を付けるものがあり,シロバナノダケと呼ばれます。
 根を前胡(ゼンコ)として利用します。前胡には肺の働きを高めて咳や痰を除く働きがあり,感冒や咳に適応のある参蘇飲や蘇子降気湯などに配合されています。また,体表を冷やして湿疹などを改善する働き(宣散風熱)も期待され,皮膚炎などに適応のある荊防排毒散にも配合されます。成分としてはウンベリフェロンの誘導体であるデクルシンやノダケニンなどが知られています。民間的には根を感冒の解熱や鎮咳に,また,葉を保温の目的として入浴料として利用します注)
 第17改訂日本薬局方では,ゼンコの基原植物としてノダケの他,Peucedanum praeruptorum Dunnも規定しています。前者を「紫花ゼンコ」,後者を「白花ゼンコ」と呼んで,中国では後者の方を良品の前胡として利用することが多いようです。また,『名医別録』などの古典にある前胡も白花前胡を指していると考えられています。ただ,現在,ノダケはAngelica属(シシウド属)に分類されていますが,かつては白花前胡と同じPeucedanum属(カワラボウフウ属)に分類されていましたので,これらは比較的近い仲間と考えられます。他にシシウド属に分類されている植物としてはトウキ,ヨロイグサ,シシウドなどがありますが,これらはいずれも薬用植物として知られています。セリ科植物由来の生薬は他にもサイコ,ボウフウ,ハマボウフウ,ウイキョウなど多く,セリ科は薬用植物の宝庫と言えます。
(川添和義,小池佑果,磯田 進)
 
注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著,『原色和漢薬図鑑(上)』,保育社
牧野富太郎 著,『牧野新日本植物図鑑』,北隆館
三橋博 監修,『原色牧野和漢薬草大圖鑑』,北隆館
上海科学技術出版社,小学館 編,『中薬大辞典(第1巻)』,小学館