餃子に欠かせない材料であるニラが今月のテーマです。ニラの香りは独特ですが、ネギに似ていると思いませんか?それは、ニラがAllium属(ネギ属)に属しているからなのです。実は、タマネギやニンニクも同じ属になり、共通の香気成分であるアリシンを含んでいるので似たような香りを生じます。
ニラは中国から渡来し、栽培されている多年草です。また逸脱して原野などでも目にすることがあります。鱗茎は叢(そう)生し、短い根茎で連なり、汚黄色の繊維に包まれています。葉は線形で長さ20~30 cm、扁平で柔らかく全縁で鈍頭です。花は白色、葉の間から高さ30~50 cmの花茎を出し、その先端に散形状に生じ6~9月に咲きます。種子は6個、黒色をしています。葉を韮菜(キュウサイ)、種子は韮子(キュウシ)または韮菜子(キュウサイシ)といいます。韮菜は生育が旺盛な頃、韮子は完熟した種子を利用します。成分はアルカロイドやサポニン、アリル硫化物であるアリイン、アリシンなどが含まれています。葉は止血や解毒作用、種子に強壮や鎮痛などの作用があることが知られています。そのため、葉は吐血や血尿、喘息、去痰に、種子は強壮や強精、興奮薬として用いられます。
中国では最も古い野菜の1つといわれ、日本でも「古事記」にカミラ(加美衣)の名で記載されており、古名のミラが転じてニラになったと考えられています。韮菜の性味は「辛、温」であり、帰経は「肝、胃、腎」です。生のまま食べると少し辛味を感じると思いますが、あの辛味のおかげで体が温かくなり、気が巡ることは想像しやすいですね。ですから、胃の弱い方にはニラのお粥がお勧めです。冷房で体が冷え、夏バテで食欲が湧かない時は、ニラを食べることで体を温めて血行も良くなり、胃腸の働きも高めてくれます。アリシンはビタミンB1の吸収を高めることが知られていますので、豚肉と一緒に摂取すると疲労回復に効果的です。今年は新型コロナ禍に長梅雨と、心身共に疲弊している方も多くいらっしゃると思いますが、ぜひ餃子などでたくさんのニラを食べて、今年の猛暑を健康的に乗り切りましょう。
(小池佑果、川添和義、磯田 進)