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生薬の花

ツユクサ
Commelina communis L. (ツユクサ科)

ツユクサの花

ツユクサの花

花の色素

花の色素

生薬 オウセキソウ(鴨跖草)

生薬 オウセキソウ(鴨跖草)

オオボウシバナ(左)、ムラサキツユクサ(右)

オオボウシバナ(左)、ムラサキツユクサ(右)

 梅雨が明けてしばらくすると、土手の斜面や道端に二枚貝にも似た可憐な青紫色の花を咲かせたツユクサ(露草)の群生がみられます。
 ツユクサは一年草で、高さが10~20 cmくらいになり、直立することはなく、茎は地面を這って分枝しながら増殖します。葉は2列で互生し、卵状皮針(ひしん)形長さ5-7 cmほどになります。広心形の苞(ほう)の中から、花弁を突き出すようにつけます。大きく重なった2枚の青紫色の花が目立ちますが、実はよく見ると小さな白色の花がもう1枚下部にあるのに気づきます。その形や色から「帽子花(ぼうしばな)」、「青花(あおばな)」ともよばれ、花の汁を衣にこすりつけて染めていたことから古くは「着草(つきくさ)」とも呼ばれていました。この花は、早朝に開花して午後には萎(しぼ)んでしまう短命花です。
 園芸種のオオボウシバナ(大帽子花、別名は青花、C. communis L. var. fortensis M.)の花弁からとった青汁で紙を染めたものが「青花紙」という製品になります。これを水に浸して染み出た色素を友禅染などの下絵を描くのに用いられています。
 開花期に全草を乾燥させたものが生薬オウセキソウ(鴨跖草)で、その煎液を解熱、利尿、感冒、熱性下痢、浮腫になどに用います。また、生品の砕いたものを外用として化膿に用います。
 属名「Commelina」はオランダ人の植物学者Jan Commelin(1629-98)と甥のCaspar Commelin(1667-1731)に因んでいます。また、若くして亡くなったCasparの息子をツユクサ属の3花弁のうちの目立たない1枚に擬(なぞら)えたものとされています。英名のdayflowerは花が短時間しかもたないことに沿うとはいえ、短命の悲しい運命であることが感じ取れます。種小名の「communis」は「一般の、普通の」を意味します。
 ところで、花が紫色でツユクサに似たムラサキツユクサ(Tradescantia ohiensis)があります。これは北アメリカ原産のツユクサ科ですが、花弁が3枚同形のムラサキツユクサ属という別属になります。こちらには利尿効果があると言われています。
(高松 智、小池 佑果、磯田 進)

 

[参考図書]

牧野富太郎 著、『原色牧野植物大図鑑 離弁花・単子葉植物編』、北隆館
三橋博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第11巻』、朝日新聞社出版局
蕭培根 編集、真柳誠(翻訳編集)、『中国本草図録3巻』、中央公論社
伊澤一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
神戸中医学研究会 編、『中医臨床のための中薬学(新装版)』、東洋学術出版社
海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典 (第1巻)』、小学館
佐竹元吉 監、『日本の有毒植物 (フィールドベスト図鑑)』、学研教育出版