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生薬の花

クガイソウ
Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell (ゴマノハグサ科)

花

芽

根茎(草本威霊仙)

根茎(草本威霊仙)

 クガイソウは、多年草草本で、草丈1-1.5mにもなります。葉は通常5-10枚が輪生して、広披針形で両端が長く尖っています。葉縁は鋸歯状です。夏期には茎頂に穂状の総状花序と呼ばれる淡紫色の小花を多数つけ、まるでブラシのように見えます。また、切り花として栽培されています。春先の若芽を、熱湯でゆでてから水にさらして、食用にします。
 クガイソウ属は東アジアを中心に約20種あり、日本産のクガイソウは全体を1種とする場合と自生地により細分されることもあります。
 秋には細かい種子が振りまかれ、その数は約1万個にも達します。これほど種子の数が多いのは、種子が小さく初期成長が遅いため、競争力に劣るためのようです。そのために親植物は株立ちして、種子を作り続ける宿命があるようです。
 和名の九蓋草(九階草 クカイソウ)の由来は、「蓋(がい)」というのは笠を数える単位とのことで、輪生葉がちょうど九層ぐらいあることに基づいていると言われています。また、仏像の飾りに使用する「天蓋(てんがい)」が、幾段にも重ねられている様子から連想して付けられたとの説もあります。虎の尾(トラノオ)の別名もあります。中国名は「斬竜剣(ざんりゅうけん)、輪葉婆婆納(りんようばばのう)」、英名は「Culver's physic、Culver's root、Black root(Veronicastrum属の総称)」です。
 秋に根茎を掘り取り、水洗いした後、日干ししたものを生薬「草本威霊仙(そうほんいれいせん)」といいます。草本威霊仙はリューマチ、関節炎、痛風、利尿、便秘に煎じて内服し、切り傷、毒蛇、さそり、ハチによる咬傷(こうしょう)虫さされには外用として、ついて塗布します。別に生薬「威霊仙(いれいせん)」がありますが、これはつる性のキンポウゲ科のサキシマボタンヅル(Clematis chinensis Osbeck)、またはその他近縁植物の根及び根茎で、「草本威霊仙」とは別物です。(高松 智、磯田 進)

[参考図書]

牧野 富太郎 著、原色牧野植物大図鑑 (合弁花・離弁花編)、北隆館
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
竹谷孝一、鳥居塚和生 編、パートナー生薬学(改訂第2版)、南江堂
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第2巻』、朝日新聞社出版局
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典 (第2巻)』、小学館
蕭培根 編、真柳 誠 翻訳編、中国本草図録(巻1)、中央公論社
難波恒雄 著、『和漢薬百科図鑑[Ⅰ]』、保育社
水野瑞夫 監修、田中 俊弘 編集、『日本薬草全書』、新日本法規出版
伊澤一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社