生薬の花

レンギョウ Coptis japonica Makino (キンポウゲ科)

レンギョウの花

レンギョウの花

レンギョウ(左)とシナレンギョウ(右)の枝の切断面

レンギョウ(左)とシナレンギョウ(右)の枝の切断面

レンギョウ(左)とシナレンギョウ(右)

レンギョウ(左)とシナレンギョウ(右)

レンギョウの果実

レンギョウの果実

 レンギョウは中国原産で、江戸時代に渡来し、当時は主に観賞用として栽培されていました。和名レンギョウの由来はオトギリソウ科のトモエソウ(弟切草、生薬名 小連翹(しょうれんぎょう)の漢名連翹を誤用したとも言われています。別名は旱連翹(かんれんぎょう)、空殻(くうかく)、中国名は黄寿丹です。学名の〝Forsythia″はイギリス人園芸家W. A. Forsythの名前にちなみ、また〝suspensa″は枝が垂れるを意味しています。英名はWeeping Forsynthia、(Weeping) Golden Bellです。

 レンギョウは雌雄異株の落葉低木で、若枝は長く伸び、垂れた枝が地面につくと、すぐにそこに根付き、新しい株を増やしていきます。高さは2~3mに達します。葉の緑は歯状で、葉のやや出る前につける花は明るい黄色で、花びら部分が深く4裂、雄しべは2本あり、木質の果実を有します。レンギョウの枝を斜めに切ると中空ですが、近縁のシナレンギョウF. viridissima Lindley(中国名 金鐘花)は髄に仕切りが現れ、その枝は直立します。

 果実は芳香があり、なめるとわずかに渋味があります。果実は完熟する前の秋に採取され、茶褐色になるまで日干ししたものが生薬のレンギョウです。シナレンギョウの成熟果実とともに、生薬レンギョウにはチフス菌、パラチフス菌、大腸菌、緑膿菌などのグラム陰性菌、およびブドウ球菌、α-およびβ-連鎖球菌、肺炎双球菌、百日咳桿菌などのグラム陽性菌に対して強い抗菌作用があります。また、消炎、利尿、排膿、解毒薬として、吹出物、疥癬などの皮膚病、腫瘍性炎症などに応用されています。花を日干ししたもの(連翹花 れんぎょうか)を煎じて服用すると利尿、緩下、高血圧の予防によいと言われています。

 レンギョウは神農本草経の下品に収載され、18世紀に考案された炎症薬に含まれます。また、根は翹根(ぎょうこん)の名称で収載されています。  生薬レンギョウを構成生薬とする漢方処方の防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、肥満体質等を改善します。

 ところで、家紋として連翹紋(連翹襷紋 れんぎょうたすきもんともいう)があります。早春に葉に先駆けて咲く黄色の可憐な花を紋章化したものですが、実物と著しく異なり連翹とは判断しにくいようです。連翹紋は公家の藤原氏公季流の代表家紋です。戸田連翹(戸田氏)、正親町(おおぎまち)連翹(磯谷氏、正親町三条家、千葉氏)などの家紋が知られています。興味があれば一度調べてみてはいかがでしょうか。(高松 智、磯田 進)

[参考図書]
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
難波 恒雄 著、『和漢薬百科図鑑[Ⅰ]』、保育社
アンドリュー シェヴァリエ 著、難波 恒雄 訳、『世界薬用植物百科事典』、誠文堂新光社
伊澤 一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
トニー・ロード 著、井口 智子 訳、『フローラ』、産調出版
水野 瑞夫 監修、田中 俊弘 編集、『日本薬草全書』、新日本法規出版
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典 (第4巻)』、小学館
佐竹 元吉、伊田 喜光、 根本 幸夫 監修、『漢方210処方生薬解説』、じほう
木村 康一、木村 孟淳 共著、『原色日本薬用植物図鑑』、保育社
千鹿野 茂 編、『家紋でたどるあなたの家系』、続群書類従完成会