センダン(栴檀)は街路樹や庭木として植えられ、初夏になると大きな羽状複葉の間から紫色の小花を円錐状にたくさん付けた光景が目に止まります。秋になると葉が落ちた枝先に、センダンの黄色い丸い実がたくさん実るのをよく見かけます。センダンは関東以西の温暖帯に庭木や街路樹として植栽されるほか、材は建築材、家具、下駄や雅楽における絃楽器の琵琶(びわ)の胴などに用いられています。
センダンは落葉高木で、高さは約10 m程のものがほとんどですが、自生のものは直径1 m、高さは20~30 mを超える大木になります。大型の葉は互生し、2~3回の羽状複葉を付けます。花期は5~6月で、若枝の葉腋(ようえき)から円錐花序を出し、5枚の花弁からなる淡紫色の花を多数開きます。
センダンの別名にはセンダノキ(楝木)、クモミグサ(雲見草)、トウヘンボク(唐変木)、古名ではアウチやオウチ(楝、樗)などがあります。和名であるセンダンの語源は不明なようです。中国名を楝樹、英名はbead treeです。学名「Melia」はモクセイ科トネリコ(梣、Fraxinus japonica)のキリシャ名(トネリコの樹の精霊の名)で葉の形が似ていることから、また「azedarach」は英語の淡青色(azure)にちなんでいます。
センダンおよび同属のトウセンダン(M. toosendan Siebold et Zucc.)の幹皮を乾燥させたものが生薬「苦楝皮(クレンピ)」です。苦楝皮は晩春から初夏に採取したものが良いとされています。苦楝皮は虫下しとして回虫、ギョウ虫、条虫駆除に煎液を服用します。また、秋に黄熟したセンダンの果実を生薬「苦楝子(クレンシ)」と呼び、整腸の目的で腹痛や疝痛に煎じて服用します。生の果肉は擦りつぶして、ひび、あかぎれ、しもやけの患部に塗布します。一方、トウセンダンの果実を生薬「川楝子(センレンシ)」と呼び、鎮静薬に用いられます。
苦楝皮はかつて「日本薬局方」に収載され、条虫駆除に用いられていましたが、残念ながら、今では収載品ではありません。これは効果がないという訳ではなく、より有効な合成医薬品が台頭したためです。センダンの名誉のためにも付け加えておきます。(高松 智、磯田 進)