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生薬の花

サンザシ
Crataegus cuneata Siebold et Zuccarini (バラ科)

サンザシの花

サンザシの花

サンザシの果実(偽果)

サンザシの果実(偽果)

オオミサンザシの花

オオミサンザシの花

オオミサンザシの果実(偽果)と生薬サンザシ

オオミサンザシの果実(偽果)と生薬サンザシ

 春になると純白の花が庭を飾り、秋には美しい赤い果実を付ける、庭木として重宝されるサンザシが目を引きます。
 サンザシは、中国原産で、高さが2mほどの落葉低木で、よく分枝し、とげが多く存在します。葉は倒卵形で、縁にはあらい鋸歯があり、基部はくさび形です。4~5月に白色の5弁花が咲き、10月には直径2cmほどの球形の赤色か黄色の果実(偽果)を結びます。この果実を乾燥したものが生薬「サンザシ(山査子)」です。種子を除いたものを「サンザニク(山査肉)」と称します。日本では果実が大きなオオミ(大実)サンザシCrataegus pinnatifida Bunge var. major N. E. Brownの果実が主に流通しています。
 日本名の山査子の「子」はもともと「果実」をさしますが、日本では子までを含めた名が植物名になっています。中国ではサンザシを「野山査」、オオミサンザシを「北山査」といいます。英名は「thorn(とげ)」です。
 学名のCrataegusはギリシャ語のkratos「力、強さ」とagein「持つ、運ぶ」が合わさってkrateros、krataios「力強い、強力な」にちなみ、cuneataはギリシャ語の「尖った、槍」からラテン語のcuneatus、cuneata「楔形(くさびがた)の」という意味に由来します。
 生薬サンザシは、その煎じ液を健胃、消化、止瀉、鎮静、消化不良、慢性下痢、産後の腹痛などに用います。黒焼きにしたものは「山査子炭」または、「山査炒炭」といい、胃出血や出血性の下痢に服用します。中国ではサンザシをお酒に漬けて「山査子酒」として服用したり、果実をお砂糖やハチミツに漬けて食したりするようです。
 類似生薬のセイヨウサンザシC. oxyacantha L.はメイフラワー(Mayflower)といい、その名の通り、5月頃に開花します。その果実や葉はヨーロッパでは「心臓によいハーブ」として、強心薬やその関連疾患、扁桃炎や消化不良に利用されてきました。また、イチョウ(Ginkgo biloba)と組み合わせて、記憶力の低下を防ぐ働きもあるようです。
(高松 智、磯田 進)

[参考図書]

牧野富太郎 著、原色牧野植物大図鑑 (合弁花・離弁花編)、北隆館
三橋博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第5巻』、朝日新聞社出版局
難波恒雄 著、『和漢薬百科図鑑[Ⅰ]』、保育社
伊澤一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
田中俊弘 著、『日本薬草全書』、新日本法規出版
アンドリュー・シェヴァリエ 著、Andrew Chevallier Mnimh 原著、難波恒雄 訳、『世界薬用植物百科事典』、誠文堂新光社
内林政夫 著、生薬・薬用植物語源集成、武田科学振興財団杏雨書屋