生薬の花

オウレン Coptis japonica Makino キンポウゲ科

キクバオウレン 花

キクバオウレン 花

キクバオウレン 花

キクバオウレン 花

セリバオウレン 果実

セリバオウレン 果実

オウレン 根茎

オウレン 根茎

 オウレンは常緑多年生の草本植物で、数少ない日本特産の薬用植物です。北海道、本州、四国の針葉樹林下に群落しています。花季は3-4月、根元から高さ10 cm位の花茎を出し、2-3個の白色の花を付けます。雌株と雄株の区別があり、花びらのように見える5-7片のものは実は萼(がく)で、本当の花びらは、萼片より短く、細いさじ形になったものもので、5-6個あります。矢車のように広がった果実の先には穴があいていて、揺らすと穴から種子がさらさらと落ちます。9-11月頃、根茎を堀取って細い根を除いて乾燥させたものが生薬の「黄連」です。約3-7%のベルベリンという成分が含まれています。  オウレンは『神農本草経』では「王連」として上品に収載され、古くから消炎、止血、瀉下などの要薬として汎用されてきました。我が国では奈良時代に中国よりオウレンの知識が伝わり、自国に生育するCoptis japonica Makinoと同じものと考え、各地に産するオウレンを用いてきました。江戸時代よりその栽培化も行われ、中国に輸出されるようになり、現在でも日本から輸出される生薬の上位を占めています。  日本産のオウレンは小葉の切れ込みによって、1回3出複葉のキクバオウレンC. japonica Makino var. japonica、2回3出複葉のセリバオウレンC. japonica var. dissecta Nakai、3-4回3出複葉のコセリバオウレンC. japonica var. major Satakeと3変種があります。日本では主にセリバオウレンが栽培され、兵庫県、鳥取県、福井県などが産地ですが、産地によりそれぞれ丹波黄連、因州黄連、越前黄連と呼ばれています。  オウレンの語源は、根茎が節状に連なり、横断面が鮮やかな黄色であることから「黄連」と呼ばれる説があり、英名の総称は「goldthread(金の糸)」です。光沢のある質厚の葉が切れ込むことにちなんでおり、属名のCoptisはギリシャ語のKoptis(切片)に由来しています。また、主成分のベルベリンは最初に、メギ科のメギ属(ベルベリス Berberis)より単離されたことから、名付けられています。  平安時代中期に編纂された古代法典の『延喜式』(927年)には、オウレンは「黄蓮(かくまくさ)」として記されていましたが、中国産のシナオウレンの漢名である「黄連」と同一物とされました。それ以後「かくまくさ」の名前は黄連に置きかえられてきたものです。(高松 智、磯田 進、鳥居塚 和生)

[参考図書]
朝日新聞社 編、『朝日百科植物の世界 第8巻』、朝日新聞社出版局
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
難波 恒雄 著、『和漢薬百科図鑑[Ⅰ]』、保育社
小倉 謙 監修、佐竹 義輔・薬師寺 英次郎・亘理 俊次 編集、『植物の事典』、東京堂
水野 瑞夫 監修、田中 俊弘 編集、『日本薬草全書』、新日本法規出版
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典 (第1巻)』、小学館