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生薬の花

キバナイカリソウ
Epimedium koreanum Nakai (メギ科)

キバナイカリソウ

キバナイカリソウ

淫羊藿(イカリソウ由来)

淫羊藿(イカリソウ由来)

 春先に花を咲かせる薬草の一つとして,メギ科のイカリソウ属植物が挙げられます.その中でもキバナイカリソウは淡い黄色の花をつける種です.多年草で草丈は20~40センチほどになり,葉は2回3出複葉,小葉は大きさが5~16センチで基部は心形です.日本各地に自生しているほか,種小名に「koreanum(韓国の,朝鮮の)」とあるように朝鮮半島や極東ロシア,そして中国の一部にも分布しています.また,キバナイカリソウのシノニム(異名)はE. cremeumですが,cremeumは「クリーム色の」という意味であり,花の色に由来しているようです.
 イカリソウ属の花は特徴的な形をしており和名の由来ともなっていますが,碇の爪のような部位は「距(きょ)」と呼ばれるものです.距は中が空洞の突起状構造であり,奥には花粉を運ぶ昆虫などを呼び寄せるための蜜が蓄えられています.イカリソウ属のほかに距を持つ植物はスミレやオダマキ,ツリフネソウ,エンゴサクなど多数ありますが,これら距を持つグループは持たないグループと比較して種の多様性が高い傾向にあるようです.距の存在により花粉を運ぶ昆虫などによる受粉を効率的に行うことができ,その結果種分化が促進されるためであると考えられています.実際にイカリソウ属の植物は世界で60種以上が確認されていることに加え,日本国内で複数種のイカリソウが分布している地域では種間雑種の存在も確認されているようです.
 キバナイカリソウの地上部を乾燥させたものは淫羊藿(インヨウカク)と呼ばれる生薬です.淫羊藿はキバナイカリソウのほかにイカリソウ,トキワイカリソウ,ホザキイカリソウ等のイカリソウ属植物を基原とし,強壮・強精作用を目的として使用されます.主要成分はフラボノイドのイカリインやエピメジンです.淫羊藿は男性の勃起不全に対する改善作用を示し,この作用はこれらのフラボノイドによるものであることが報告されています.その他,女性の生殖器に対する保護作用も示すようです.淫羊藿は漢方処方の配合生薬としての使用頻度はそれほど高くありませんが,滋養・強壮を目的としたドリンク剤や薬用酒にしばしば配合されています.

(伊藤ほのか、磯田 進)

注)薬用成分が含まれていますので,利用に関しては必ず専門家にご相談下さい。また,利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著、『和漢薬百科図鑑(Ⅱ)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:107288-1
Shuixian L., Jiannan F., Cheng X., Hongyan S. and Hongzhi K. (2024).
Spur development and evolution: An update. Current Opinion in Plant Biology, 81:102573.
https://doi.org/10.1016/j.pbi.2024.102573
Horie S., Suzuki K. and Maki M. (2012).
Quantitative morphological analysis of populations in a hybrid zone of Epimedium diphyllum and E. sempervirens var. rugosum (Berberidaceae). Plant Ecology and Evolution, 145(1), 88-95.
https://doi.org/10.5091/plecevo.2012.637
Cui J, Lin L, Hao F, Shi Z, Gao Y, Yang T, Yang C, Wu X, Gao R, Ru Y, Li F, Xiao C, Gao Y and Wang Y (2024)
Comprehensive review of the traditional uses and the potential benefits of epimedium folium. Front. Pharmacol.
15:1415265. doi: 10.3389/fphar.2024.1415265