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生薬の花

ウラジロガシ
Quercus salicina Blume. (ブナ科)

ウラジロガシの雌花

ウラジロガシの雌花

ウラジロガシの雄花

ウラジロガシの雄花

ウラジロガシの果実

ウラジロガシの果実

ウラジロガシの葉(下は裏側)

ウラジロガシの葉(下は裏側)

 「東北以南の本州、四国、九州、沖縄に自生する高木で、高さ20メートル、幹の周囲が1メートルに達するものもあります。薄い革質の葉には浅い鋸歯があり、裏側が白いのでこの名前があります。雌雄同株で、春先に雄花と雌花を別々に咲かせます。雌花は少し赤みがかった花托に雌しべがついた簡単な花で、雄花は何本も穂状に垂れた花序に黄色い葯がつきます。秋になると帽子をかぶったドングリができます。
 カシの仲間は中国では果実を古くから薬用として利用していたようですが、日本での利用はなかったようです。ウラジロガシが薬用植物として広く知られるようになったのは、実は比較的最近なのです。徳島県で「シラカシ」と呼ばれる植物の葉や小枝を胆石の薬として利用していた地域があり、1925年頃に徳島大学医学部で研究・発表されたことから広く知られるようになりました。その後の研究により結石溶解作用や形成抑制作用があることが科学的に解明され、市販されるようになりました。成分としてはフリーデリンなどのトリテルペン、クエルセチンなどのフラボノイドやタンニン類が含まれていることがわかっています。現在、ウラジロガシエキスは腎結石・尿管結石の排泄促進薬として医療用医薬品としても使われています。
 生薬の中にはウラジロガシのように民間薬から知られるようになったものがあり、ゲンノショウコやセンブリなども古くから日本で民間伝承されてきたものです。かつては日本各地にこのような伝承医薬品が多く残っていたのですが、インターネットが発達し、医薬品が簡単に入手できるようになった現在、民間伝承はほとんどなくなってしまいました。しかし、消えていきつつある伝承薬の中には新しい医薬品のヒントとなる「原石」がまだ埋もれているかも知れません。伝承薬の科学的研究が急がれます。  

(川添和義、小池佑果、伊藤ほのか、磯田 進)

注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。

[参考図書]

難波恒雄 著、『原色和漢薬圖鑑(下)』、保育社
三橋 博 監修、『原色牧野和漢薬草大圖鑑』、北隆館
幸田嘉文、四国医学雑誌、16巻、pp.287-300 (1960)