menu

薬学用語解説

嘔気と嘔吐
悪心と嘔吐

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

嘔気は胃の中にあるものを吐き出したいという切迫した不快感、「嘔吐したいという心理状態」であり、いわゆる吐き気。嘔吐は胃の内容物の傾向的排泄であり、実際に吐くこと。鼻腔、咽喉、食道、胃などの粘膜その他腹腔内臓器に化学的あるいは機械的刺激が加わると、内蔵知覚神経を経て延髄の嘔吐中枢へ伝えられ、嘔吐反射が起こる。また脳圧の増大、内耳の迷路への刺激(乗り物酔い)でも嘔吐反射が起こる。延髄にある嘔吐中枢が刺激されると胃の出口が閉ざされ、反対に胃の入口が緩み、胃に逆流運動がおこる。それとともに横隔膜や腹筋が収縮して胃を圧迫し、胃の内容物が排出される。中枢性、末梢性に分類される。中枢性の原因として脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、脳出血、くも膜下出血、精神的要因など、末梢性の原因として消化器疾患、前庭機能異常、緑内障、さらに薬物(ジギタリス、テオフィリン、抗癌薬など)の副作用などがある。 催吐薬(emetics)には胃粘膜と中枢神経の化学受容器引金帯(CTZ; chemoreceptor trigger zone)を刺激するエメチンを含むトコンシロップなどがある。制吐薬には、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(ジメンヒドリナートなど)、フェノチアジン誘導体(クロルプロマジン、プロクロルペラジンなど)ドパミンD2受容体拮抗薬(ドンペリドン)、胃粘膜局所麻酔薬のオキセサゼインなどなどがある。また抗癌薬の副作用としての嘔吐を抑える薬物として、セロトニン5HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、オンダンセトロン、アザセトロンなど)やニューロキニンNK1受容体拮抗薬(ホスアプレピタントなど)がある。