薬学用語解説
抗不整脈薬
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
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不整脈の治療に用いられる薬物。古典的なVaughan-Williams分類では、頻脈性不整脈に対する抗不整脈薬を作用機序によりクラスI-IVに分類している。クラスI群はNa+チャネル遮断薬である。キニジン、ジソピラミドなどのIa群の薬物はNa+の細胞内流入を抑制し、活動電位の立ち上がりを抑制し、伝導速度を遅くする。活動電位持続時間を延長し、有効不応期を延長する。主として心房性不整脈に効果を示すが、心室性不整脈の治療にも用いられる。リドカイン、メキシレチンなどのIb群の薬物は、心室筋の活動電位持続時間を短縮するが有効不応期に対する効果が小さく、相対不応期としては延長し異常な自動興奮を抑制する。クラスII群薬はアドレナリンβ受容体遮断薬である。プロプラノロールは交感神経系の亢進による不整脈に効果があるほか、キニジン様の膜安定化作用も持つ。心筋抑制作用も強く心不全や喘息を悪化させる危険があるが、抗狭心症作用ももつ。クラスIII群薬はK+チャネル遮断薬あるいは再分極遅延薬である。電位依存性K+チャネルを抑制することにより活動電位持続時間の延長、有効不応期の延長を起こす。アミオダロンやソタロールなどがある。クラスIV群薬はカルシウム拮抗薬であり、房室結節の不応期を延長させ、房室伝導を抑制する。ベラパミルやジルチアゼムがここに含まれる。この他に、強心薬のジゴキシンは心房細動・粗動による頻脈や発作性上室性頻拍にも適用される。徐脈性不整脈に対する治療薬には、抗コリン薬のアトロピンやアドレナリンβ受容体アゴニストのイソプレナリンがある。