薬学用語解説
疼痛
痛み
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
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組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、そのような傷害を表す言葉を使って表現される不快な感覚、情動体験(1994 世界疼痛学会)。急性疼痛(生理学的痛み)は組織損傷があるときに訴えられ、生体における警告反応と解釈されている。一方、組織損傷が治癒した後にもおこる痛みや、明らかな組織損傷が見当たらないのに訴えられる痛みがある(慢性疼痛)。おおかたの慢性疼痛は急性疼痛のコントロール不良に引き続いて生じ、疾患が通常治癒するのに必要な期間を越えても続く痛みである。発生の原因別には、侵害受容性疼痛(nociceptive pain)、神経障害性疼痛(neuropathic pain)、心因性疼痛(psychogenic pain)に分類される。 疼痛の治療に用いられる鎮痛薬は、意識障害を起こさず他の触覚などの諸感覚に影響を与えない用量で選択的に痛みを除去する薬である。中枢に作用し強力な鎮痛作用をもつ麻薬性鎮痛薬 (narcotic analgesics、モルヒネ、コデイン、フェンタニル、ペチジンなど)、末梢作用性で温和な鎮痛作用をもつ非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)、およびアセトアミノフェンなどの解熱性鎮痛薬 (antipyretic analgesics)がある。がん性疼痛の管理においては、これらの鎮痛薬に加えて抗てんかん薬、抗不整脈薬、三環系抗うつ薬、ステロイド、NMDA受容体拮抗薬などが鎮痛補助薬として用いられる。従来の鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬やNSAIDs)の有効性が低い神経障害性疼痛に対しては、プレガバリン、ミロガバリン、三環系抗うつ薬のアミトリプチリンなどの適用が承認されている。