薬学用語解説
高血圧症
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
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正常者の平均値よりも常に血圧が高い状態を示す疾患。日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019では、収縮期血圧(最高血圧)140 mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)90 mmHg以上の両者またはいずれかである場合に一般的に高血圧症と診断する。高血圧症以外の危険因子[60歳以上、男性、心臓病の家族歴、喫煙、脂質異常症、糖尿病など]が重なると、脳卒中や心筋梗塞を起こす危険度が高まる。高血圧症では自覚症状のない場合も多いが、頭痛、めまい、耳鳴り、のぼせ、吐き気、動悸、息切れなどの徴候がある。重症では、手足の脱力感、しびれ、舌のもつれ、呼吸困難、手足のむくみなどもみられる。 高血圧症は原因により本態性高血圧症と二次性高血圧症に分類される。本態性高血圧症とは、原因が特定できないものをいい、高血圧症患者の約95%はこの範疇に入る。遺伝因子と環境因子(過剰な塩分摂取、肥満、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスなど)が複合して発症する生活習慣病の一つである。二次性高血圧症は腎臓、副腎の病気、内分泌の機能障害、妊娠中毒などが原因で高血圧となるもので、一般に原因が治れば血圧も正常になる。高血圧症は、動脈硬化、虚血性心疾患、脳血管疾患、腎機能低下などを合併しやすい。 治療は重症度や合併症を考慮しつつ、食事療法などの生活習慣改善と薬物療法の両面から行われる。薬物療法に用いる主な高血圧の薬は利尿薬、交感神経抑制薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンギオテンシン2受容体拮抗薬がある。利尿薬は、体内のナトリウムや水分を排泄し、血液量を減らすことで血圧を下げる。交感神経抑制薬(βブロッカー、α1ブロッカーなど)は、心臓や血管の緊張を和らげ血圧を下げる。 カルシウム拮抗薬は、血管を拡張する作用で血圧を下げる。 アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)およびアンギオテンシン2受容体拮抗は、アンギオテンシン2の生成あるいは作用する受容体を抑えて血圧を下げる。