menu

薬学用語解説

麦角アルカロイド

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

小麦・ライ麦などに寄生する麦角菌(Claviceps purpureaなど)により産生されるアルカロイド。麦角菌に感染した穀物は穀粒の代わりに硬化部位(菌核)を形成し、これが麦角と呼ばれる。麦角アルカロイドにはリゼルグ酸、エルゴタミン、エルゴメトリン、エルゴクリスチンなどがある。構造的にはリゼルグ酸を共通骨格とし、エルゴタミン、エルゴメトリン、エルゴクリスチンはこれに3種以上のアミノ酸が集まった環状ペプチド構造をもち、ペプチド型麦角アルカロイドとも呼ばれる。アドレナリン、セロトニン、ドパミン受容体に作用するものが多い。エルゴタミンは血管収縮作用をもち片頭痛治療薬として使われた。心血管系の副作用がある。エルゴメトリンは子宮の平滑筋を収縮させ、陣痛促進や分娩後の子宮出血抑制に用いられた。麦角アルカロイドより合成されたリゼルギン酸ジエチルアミド(リセルグ酸ジエチルアミド;LSD25)は主として知覚、ことに視覚領域を主とする多彩な幻覚、陶酔感や陽気な気分、逆に不安な抑うつをきたす。乱用により脳障害をおこし、精神病症状や自殺傾向を生じる場合がある。