薬学用語解説
脂質異常症
高脂血症
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
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血液中の脂質の値が異常に高いあるいは低い状態(高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症)の総称。血中脂質にはHDL-コレステロール(HDL-C)、LDL-コレステロール(LDL-C)、リン脂質、中性脂肪(トリアシルグリセロール)、遊離脂肪酸などがある。2007年の「動脈硬化性疾患ガイドライン」で「高脂血症」を「脂質異常症」に置き換える方針が出された。従来は総コレステロール値が予防・診断の基準となっていたが、これに代わり空腹時採血でLDL-コレステロールが140 mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、HDL-コレステロールが40mg/dL未満を低HDLコレステロール血症、トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL以上を高トリグリセライド血症、non-HDLコレステロールが170 mg/dL以上を高non-HDLコレステロール血症と診断する。 遺伝による家族性脂質異常症のほか、飽和脂肪やコレステロールが多い食事、糖尿病、肥満、運動不足、過量の飲酒、甲状腺機能異常、腎臓病などが原因であり、生活習慣病の一つである。ほとんどの場合は自覚症状がないが、脂質異常症が続くと動脈硬化、心筋梗塞の発症が高まり、主要な危険因子である。治療の目的はアテローム性動脈硬化の発症を抑制し、冠動脈疾患と心筋梗塞の可能性を低下させることである。 治療には減量、脂肪やコレステロールの摂取量を減らす食事療法、運動量の増加、そして薬物療法がある。薬物ではHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、フィブラート系薬(クロフィブラートなど)、陰イオン交換樹脂(コレスチラミンなど)、ニコチン酸系薬(ニコモールなど)、コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)などが使用される。HMG-CoA還元酵素阻害薬はLDLレベルを著しく低下させる。フィブラート系薬は中性脂肪を低下させるのに有効である。