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薬学用語解説

関節リウマチ

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

多発性関節炎を主体とする進行性の慢性全身性自己免疫疾患。関節滑膜に炎症が生じ、次第に滑膜から軟骨、骨へと波及し、やがて関節自体を破壊し、関節変形をもたらす。その結果、日常生活動作が障害され、時に生命予後を悪化させることもある。遺伝素因に内分泌の異常、微生物感染などの環境因子が加わり、さらに免疫異常、自己免疫を含めた複雑な要素により病態が形成される。  人口の0.8%の頻度で認められ、わが国では80万人程度の患者が存在すると考えられている。20-40歳代の女性に多いが、最近では65歳以上の高齢者の発症も多くなって来ている。関節リウマチでは滑膜微小血管に障害が起こり、滑膜組織に好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞が集積する。これらの細胞から炎症を惹起する腫瘍壊死因子α (TNFα)やインターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)などのサイトカインが産生され、滑膜細胞は増殖しパンヌス(炎症性に増殖した滑膜組織)を形成し、関節破壊がおこる。IgGとリウマトイド因子からなる免疫複合体も組織障害の一因となる。滑膜細胞の異常増殖にかかわる因子としてシノビオリン(synoviolin)と呼ばれる酵素が注目されている。  治療には、抗炎症薬(非ステロイド、ステロイド)、抗リウマチ薬、免疫抑制薬、関節可動域体操、温熱療法、補装具、滑膜切除術、人工関節置換術などを必要に応じて用いる。抗リウマチ剤(DMARDs)は、別名「疾患修飾抗リウマチ薬」、「遅効性抗リウマチ薬」、「寛解導入薬」などと呼ばれており、リウマチの進行を遅らせる。免疫調整薬と免疫抑制薬および生物学的製剤があるが、鎮痛作用(痛み止めの作用)は無い。従って、効果が現れるには一般的に数週間から数ヶ月の期間を要する。免疫調整薬としては金塩類、免疫抑制薬としてはメトトレキサート、ミゾリビン、レフルノミド、タクロリムス、トファシチニブなどがある。生物学的製剤には、抗TNFα抗体(インフリマキシブ、アダリムマブなど)、TNFα可溶化受容体(エタネルセプト)、抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ、サリルマブ)がある。生物学的製剤は他の抗リウマチ薬に比べ、骨破壊の抑制効果が著明である。  慢性の経過を回避できる例もあることから、日本リウマチ学会で2002年に慢性関節リウマチから関節リウマチに改名された。関節リウマチに血管炎をはじめとする関節外症状を認め、難治性で重篤な臨床症状を伴うものを悪性関節リウマチという。