薬学用語解説
大麻
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
薬理系薬学部会
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「大麻取締法」で規制される大麻草及びその製品。ただし大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)ならびに大麻草の種子及びその製品を除くと規定されている。大麻中にはカンナビノイドと総称される特異的な成分が含まれている。マリファナ( marijuana )は、大麻草の花、茎、種子、葉などを乾燥し切り刻んだ混合物である。大麻は世界的に乱用されている薬物で、特に西アフリカ、オセアニア、中央アメリカ、北アメリカは乱用が多い地域である。わが国でも次第に若年層を中心とした乱用が拡大した。大麻は幻覚作用と中枢抑制作用をあわせもつ。実験動物に対して、カタレプシー惹起、運動失調、被刺激性の増大、薬物睡眠延長、鎮吐、鎮痛、鎮静、体温下降、眼圧低下、自発運動抑制、抗痙攣、血管拡張、角膜反射消失など多種多様の薬理作用を示す。ヒトで見られる薬理作用は心拍数の増加、結膜血管のうっ血、口渇、異常な空腹感、甘味の要求などがある。また、精神的には多くの場合意識が変化し、夢幻的陶酔状態となり、非現実感、多幸感、空間および時間感覚の歪曲などがみられる。これらの作用は活性物質の摂取量、摂取経路、摂取の経験などのほか、気分および乱用者の期待感、乱用場所の状況も大きく影響される。精神依存性、耐性は弱く、身体依存性はない。しかし、米国などでは大麻乱用者の多くがコカイン、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、ヘロインなどより強力な薬物に移行するなど、踏み石(stepping stone)あるいは入門薬物(ゲートウェイ・ドラッグ)になることがより大きな問題とされている。