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薬学用語解説

吸収
薬物吸収

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
物理系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

投与された薬物が、全身循環血液中に移行する過程。経口の投与経路が最も一般的であるため、吸収とは、主に消化管内の上皮細胞の膜を通過する薬物の輸送のことをいう。経口投与された薬物は、消化管より門脈血液、肝臓を経て全身循環血液中にはいり、目的とする作用部位に運ばれる。この、全身循環血中へとり込まれる割合・速度をバイオアベイラビリティ(生体内利用能)と呼び、薬物吸収性の定量的指標となっている。 消化管の粘膜上皮細胞での吸収する機構として、受動輸送(受動拡散および促進拡散)、能動輸送ならびにタンパク質などを輸送する膜動輸送が知られている。受動拡散では薬物の濃度勾配に基づき、消化管内から血液側へ、単純拡散によって膜を通過して輸送される。促進受動拡散では、膜の輸送体により濃度勾配に沿って輸送される。能動輸送では細胞によるエネルギー消費を伴って輸送する。膜動輸送では細胞膜が陥入し、微粒子や液体を取り囲み再び融合して小胞を形成し、細胞内へ移動する。 薬物相互作用による、吸収部位での吸収速度の変化、吸収量の変化が知られている。胃内容物排出速度を低下させるプロパンテリンはアセトアミノフェンの吸収遅延を起こし、排出速度を促進するメトクロプラミドは吸収促進を起こす。吸収量に変化を与える影響として、吸着性、溶解性、分解性など薬物の物理化学的特性に関係する相互作用と、消化管粘膜上皮の輸送体や代謝酵素の阻害・誘導に基づく相互作用がある。