薬学用語解説
多光子励起
多光子吸収
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
物理系薬学部会
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通常、分子軌道の電子の励起では、1つのエネルギー状態の変化は、1個の光子の吸収によって引き起こされる。その際、光子の持つエネルギーと励起される分子の遷移のエネルギー(バンドギャップ)はよく対応する。これに対して、複数個の光子をほぼ同時に分子が吸収することで、同様の遷移が起こるとき、これを多光子励起という。1光子当たりのエネルギーは、通常の遷移に比べて小さくてよいので、より長波長の光によって遷移が起こることになる。ただし、複数の光子をほぼ同時に吸収する必要があるため、パルスレーザー光を集光した焦点のような非常に光子密度の高いときにしか起こらない。確率的な理由から、二光子励起が最も観測されやすい。