薬学用語解説
準安定領域
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
物理系薬学部会
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ある条件下において、熱力学的に安定な状態とは異なる状態が比較的長時間維持されるとき、その状態を準安定状態という。溶解現象においては、過溶解度曲線と溶解度曲線の間の領域を準安定領域と呼ぶ。溶解度以上の溶質が溶けた状態を過飽和と呼ぶが、溶質が過飽和で存在できる濃度には限界があり、この値を過溶解度という。過溶解度は、熱力学的には決定できず、溶液から結晶核が生成しやすい限界濃度を実験的に実測することで入手している。過溶解度以上の状態にすると急速に微結晶(結晶核)が生成して、製品の結晶粒径が細かくなるので、粗大で良質な結晶を得ることができない。したがって、準安定領域は、良質な結晶を安定して得るための目安となる領域であり、工業的に結晶を生産している企業では、準安定領域を意識して晶析操作条件を選定している。