薬学用語解説
概日リズム
日周リズム、日内変動
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会
約24時間の周期で変動し、そのリズムの周期が光パルスや暗パルスによってリセットされる生理現象。脳波、ホルモン分泌、細胞の再生、その他の多くの生命活動には概日リズムが存在しており、睡眠や摂食のパターンを決定する点において重要である。動物には内在的な時計機構が備えられており、完全な暗闇の中でも、約24時間の周期で睡眠/覚醒サイクルを繰り返す。このリズムをもたらしているものを、生体時計(体内時計)と呼んでいる。生体時計の周期は24時間にぴったりと一致しているわけではないので、完全な暗闇の中で長期間飼育すると、周期が24時間より短い場合は日々サイクルが前進し、長い場合は日々後退する。この体内リズムは、明暗の刺激など外界のさまざまな事象の時間的変化(同調因子)を手がかりとして、内因性リズムの周期を24時間に微調整することにより、内因性リズムの位相と外界の時間が同調するようになる。同調因子には、(1)光による明暗(昼と夜)のほか(2) 社会的因子(家庭・学校・会社・仕事・遊び)、(3)食事、(4)身体的運動、(5)温度・湿度・騒音・振動などの環境も含まれる。 哺乳類の時計中枢は視床下部の視交叉上核に存在する。視交叉上核の細胞は、体外に取り出して培養しても、独自のリズムを刻み続ける。視交叉上核を破壊された動物では、規則正しい睡眠・覚醒リズムが完全になくなってしまう。光(明暗)の情報は視神経を介して視交叉上核に伝えられる。視交叉上核から発せられたリズムの信号は松果体へ伝えられ、松果体ではこの情報に応答してメラトニンが分泌される。メラトニン分泌は夜間に高く昼間に低い。ジェット時差症候群(時差ぼけ)や、不規則な勤務時間によりおこる交代勤務性睡眠障害は、内因性リズムの位相が外界の時間に同調しきれずにおこる、一過性のリズム異常である。日、週、季節、年などの単位で経時的に変化する生物のリズムを研究する学問を時間生物学という。臨床上でも、概日リズムを考慮した投薬も行われている。