薬学用語解説
上皮-間葉分化転換
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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上皮細胞が間葉系細胞へと分化するプロセスで、細胞は極性を失って細胞間接着分子であるE-カドヘリンなどを発現しなくなり、N-カドヘリン、ビメンチンやフィブロネクチンなどを発現するようになる。TGF-βなどのシグナル伝達経路を介して、SnailやZEB1などの転写因子の働きで誘導される。EMTを起こした細胞では、運動能、浸潤能の亢進が見られる。発生の段階でしばしば見られる生理的な現象であるが、成人の組織では創傷治癒/組織線維化や発がん/浸潤・転移に関与している。組織線維化の際には、細胞外マトリックスを産生する細胞の約30%は、EMTによって上皮細胞から分化した間葉系細胞であるという報告がある。また、がん分子標的治療薬に対する耐性獲得機序として知られており、がん幹細胞様の機能獲得にも関与している。