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薬学用語解説

P糖タンパク質

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

消化管粘膜、腎尿細管上皮細胞、脳血管内皮細胞(血液脳関門)などで、異物、薬物などを細胞外へ排出するABCトランスポータファミリーの一つ。薬物の生物学的利用能や薬物の標的組織への分布に影響を与える。細胞内ドメインにATP結合領域(ABC)を2個もち、この加水分解エネルギーを利用する。P糖タンパク質をコードするヒト遺伝子は、MDR1(ABCB1)と呼ばれる。抗がん剤に対するがん細胞の多剤耐性化機構の一つとして発見されたが、その後、正常組織の腎近位尿細管、肝臓の毛細胆管や腸管の管腔側膜、脳と精巣の毛細血管内皮細胞などでもみいだされた。比較的脂溶性の高いカチオン性物質を基質とするが、その基質認識性は広い。消化管粘膜のP糖タンパク質は、薬物を管腔側に排出し、また、脳血管内皮細胞では、薬物の脳組織内への分布を制御している。マクロライド系抗菌薬、アゾール系抗菌薬などによる阻害やリファンピシンによる誘導を受ける。遺伝的多型も存在し、機能には個体差があるとされている。