薬学用語解説
電子伝達系
呼吸鎖(こきゅうさ;respiratory chain)
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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呼吸鎖ともいう。酸化還元反応が連鎖的に起こり、電子の移動が行われる系。ミトコンドリア、葉緑体、好気性細菌の細胞膜などのさまざまな生体膜に存在する。ミトコンドリア内膜に存在する電子伝達系では、解糖系やクエン酸回路などで生じた還元型補酵素(NADH、FADH2)の酸化に際して、膜結合型酸化還元タンパク質群(NADH-ユビキノンオキシドレダクターゼ(複合体I)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(コハク酸-ユビキノンレダクターゼともいう;複合体II)、ユビキノール-シトクロムcオキシドレダクターゼ(複合体III)、シトクロムcオキシダーゼ(複合体IV))に電子が順次受け渡される。それに伴って、プロトンがマトリックスから膜間腔に汲み出され、形成されたプロトンの勾配を利用してATPが産生される。すなわち、NADHやFADH2に由来する電子が膜結合型タンパク質を介して、よりエネルギーの低い状態に流れて水が産生されるまでの間に、放出されたエネルギーがプロトン勾配の電気化学エネルギーとして一時的に保存され、このエネルギーがATPシンターゼによるATP産生に利用される。また、小胞体で薬物代謝などに関与するシトクロムP450系や、白血球で活性酸素種を産生して殺菌に関与するNADPHオキシダーゼなども電子伝達系の一種といえる。