薬学用語解説
インスリン受容体
作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
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チロシンキナーゼ共役型の細胞膜受容体。インスリンと結合するαサブユニットと、細胞膜を貫通して細胞質領域にチロシンキナーゼを内在するβサブユニットが、ジスルフィド結合によって連結されたタンパク質。もともとは一つの前駆体タンパク質として生合成されたのちに、エンドプロテアーゼによる限定切断を受けてαサブユニットとβサブユニットになる。インスリンと結合することにより、細胞内へのグルコースの取込み、グリコーゲン合成を促進するシグナル伝達を開始する。インスリンとの結合により内在するチロシンキナーゼが活性化され、自己リン酸化される。そのリン酸化チロシンにインスリン受容体基質1(IRS 1)が結合し、IRS1はリン酸化される.リン酸化されたIRS1はホスホイノシチド(PI)-3-キナーゼ(PI3-kinase)に結合して活性化する。活性化されたPI3-キナーゼによってPI(4,5)P2から産生されたPI(3,4,5)P3は、プロテインキナーゼB(PKB;別名Akt)を細胞膜に引き寄せ、同じくPI(3,4,5)P3と結合することで細胞膜に引き寄せられたホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)によりPKBはリン酸化されて活性化する。活性化されたPKBは、脂肪細胞などではグルコース輸送体4(GLUT4)が存在するエンドソームを細胞膜と融合させて、グルコースの細胞内取込みを促進する。一方、肝臓などでは、PKBはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3の不活化を介してグリコーゲンシンターゼを活性化して、グリコーゲンの合成を促進する。