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薬学用語解説

チェックポイント制御
細胞周期チェックポイント制御(さいぼうしゅうきちぇっくぽいんとせいぎょ;cell cycle checkpoint control)

作成日: 2023年07月22日
更新日: 2024年03月01日
生物系薬学部会
© 公益社団法人日本薬学会

細胞周期チェックポイント制御ともいう。細胞周期において、各期が秩序正しく進行するように制御する機構。G1期からS期への移行の際には、DNAが損傷を受けていないか、外部環境は増殖に適しているかなどがチェックされ、G2期からM期への移行の際には、DNA複製が完了しているか、DNAは損傷を受けていないかなどがチェックされる。もしもDNAが損傷を受けていたり、複製が不十分であったりする場合には、チェックポイントで細胞周期が停止し、準備が整う前に次の過程が始まらないような制御を受ける。細胞周期の各期の開始と終了は、それぞれに特異的なサイクリン-サイクリン依存性キナーゼ(CDK)複合体の活性状態によって規定される。CDKの活性は、サイクリンとの結合、およびリン酸化によって調節される。G1/S期にDNA損傷があると、損傷を感知したATMなどのキナーゼがp53タンパク質をリン酸化して活性化することによってp21タンパク質の発現が誘導される。このp21はサイクリン-CDK複合体に結合することによりCDKを不活性化し、DNA合成などを抑制して細胞周期をG1期で停止させる。p53に異常や欠損があると、損傷DNAがそのまま複製され、細胞ががん化しやすくなると考えられる。 細胞分裂期には紡錘体形成チェックポイントが存在し、適切な染色体整列を保証している。パクリタキセル、ビンクリスチンなどは、微小管動態に影響を及ぼす(それぞれ、微小管の脱重合と重合を阻害する)ことでこのチェックポイントを活性化し、がん細胞に細胞死を誘導する抗悪性腫瘍薬である。